秋月電子の 500MHzスペクトラムアナライザー・アダプター・キット
はじめに
この文章は秋月電子の 500MHzスペクトラムアナライザー・アダプター・キットを
改良しようとしたメモです。キットの購入時期によっては部品が異なり
特性等は異なる可能性があります。またサンプル数は1です。
内部写真
古いモデムのケースを流用しています。
部品の特性
TVチューナ部の特性
測定方法は、スペアナアダプタとして組み立てた状態で入力に 150-190[MHz] を
いれ、チューナの BT 端子には一定電圧をかけ、チューナの IF 出力をオシロと
周波数カウンタで見た。AGC ゲインは12[V]とした。
IF 出力は、オシロの帯域幅(10[MHz])を越え、
周波数カウンタの感度の悪い領域を使っている(カウントミスが多い)ため、
数値は傾向を知るためのものにしかならない。
入力0.1[V]のときの、入力周波数[MHz]に対する IF 出力の周波数[MHz]と電圧[mV]
入力周波数[MHz] | チューナの入力周波数[MHz] |
IF out[MHz](周波数カウンタの読み) | IF out[MHz](推測) |
出力[mV] |
150 | 650 | - | 5 | 2 |
155 | 655 | - | 10 | 15.5 |
160 | 660 | - | 15 | 32 |
165 | 665 | 22.2 | 20 | 23 |
170 | 670 | 28.8 | 25 | 35 |
175 | 675 | 30.5 | 30 | 12 |
180 | 680 | 35.5 | 35 | 8 |
185 | 685 | 40.4 | 40 | 6 |
190 | 690 | 47 | 45 | 3 |
入力が大きいため、170MHz でのIF出力は歪んで電圧が大きくなっている。
入力0.03[V]のときの、入力周波数150-190[MHz]に対する IF 出力の周波数[MHz]と電圧[mV]
入力周波数[MHz] | 出力[mV] |
150 | 0 |
155 | 5 |
160 | 15 |
165 | 20 |
170 | 16 |
175 | 12 |
180 | 8 |
185 | 5 |
190 | 1 |
入力0.03[V]のときの、入力周波数160-170[MHz]に対する
IF 出力の周波数[MHz]と電圧[mV]
入力周波数[MHz] | 出力[mV] |
160 | 15 |
162 | 22 |
164 | 21 |
166 | 20 |
168 | 18 |
170 | 16 |
TVチューナのIF出力の帯域幅は 15[MHz] ぐらいあり、
キットでは IF 出力を 5.5[MHz]を中心に利用しているが、変換効率が
かなり悪い領域を使っていることがわかる。17-19[MHz]あたりを利用すれば
変換効率が良さそうである。
注: 参考文献1によるとチューナの IF 部分には 31MHz 付近、参考文献2によると
30MHz付近のフィルタが入っていること。
このチューナユニットはコイルをいじってしまったので
ずれている可能性と、出力の大きさを見ているオシロ(帯域10[MHz])の特性の
影響がある。
参考文献2の周波数コンバータは有効と思われる。
TVチューナの入力に対する IF 出力(CF10-24 のフィルタ出力, 挿入損失は
ここでは無視できる)は、
TV チューナ入力[dBm] | IF出力[dBm] |
-60 | -80 |
-50 | -70 |
-40 | -60 |
([dBm] は 50[Ω]終端時の値, IF出力は、LA1150の出力電圧から逆算)となった。
-30[dBm]以上の入力を加えるとスプリアスが発生した。
IF出力が -80[dBm]以下では S meter 回路が働かない(下記参照)。
TV tuner が、-100[dBm] の入力に対しても正しく働くのなら、
IF出力の先で、+40[dB] のアンプを入れることで 70[dB]の
ダイナミックレンジが確保できることになる。
しかし、
MAR-1(単体で平均電力利得18.5[dB](@100[MHz]),15.5[dB](@1[GHz]), NF5.5[dB],
アンプを組んだ時にはこれより落ちるはず)
を使ったアンプを挿入したところ、うまくいかなかった。
ノイズレベルが上がって、ダイナミックレンジは増えなかった。
TV tuner が動作していても、
かなりローノイズのアンプでシールドをきちっとしないと
ダメそうだった。
フィルタなしで、LA1150につないだ時の S meter 出力を測ってみた。
チューナユニットのチューニング電圧は固定し、AGC電圧 12[V]をとした。
スペアナアダプタに 60MHz 台を入力し、
スペアナアダプタで 500[MHz] と混合したので、
チューナユニットには 560MHz 台が加わっている。
入力周波数[MHz](@100[mV](-10[dBm]))に対する S メータ出力(LA1143)電圧[V],
S メータ出力0.5[V]はノイズレベル
40MHzぐらいのフィルタ幅のスペアナになってしまう。
LA1143 + SFE5.5MC2 の特性
周波数一定での LA1143 の S meter 出力電圧を SFE5.5MC2 あり/なしで測ってみた。
周波数一定(SFE5.5MC2 の中心周波数 5.500MHz)での
LA1143/SFE5.5MC2 + LA1143 の入力[dBm]に対する出力電圧(S meter 出力)[V]
挿入損失はほぼ無視できることがわかる。
入力が -80[dBm] から -10[dBm] であれば、直線性はある。
入力電圧一定(-20[dBm], 0.03V)での
SFE5.5MC2 + LA1143 の入力周波数[MHz]に対する出力電圧(S meter 出力)[V]
あまりきれいな形ではない。
セラミックフィルタ CF 10M-24
ジャンクで持っていたセラミックフィルタ、太陽誘電のCF 10M-24(この
後ろに 350 とある、数値の意味は不明)を SFE5.5MC2 と交換してみた。
セラミックフィルタに交換した時の、S meter 出力を測ってみた。
チューナユニットのチューニング電圧は固定し、AGC電圧 12[V]をとした。
スペアナアダプタに 60MHz 台を入力し、
スペアナアダプタで 500[MHz] と混合したので、
チューナユニットには 560MHz 台が加わっている。
入力[dBm](@60MHz)に対する S メータ出力(LA1143)電圧[V]
ただし、入力を大きく(-20[dBm]以上)すると
スプリアスが大きくなっていく(TV tuner の特性)。
入力周波数[MHz](@100[mV](-10[dBm]))に対する S メータ出力(LA1143)電圧[V],
S メータ出力0.5[V]はノイズレベル
フィルタ特性は、SFE5.5MC2 よりきれいな形をしている。帯域は
少し広いようである。帯域 350KHz といったところであろうか。
21.7MHz filter
21.7MHz のフィルタを入手した。中心周波数以外は不明だが、帯域は 30kHz ぐらい
だった。同時に中心周波数 58MHz のフィルタも入手したが、こちらの帯域は測って
いない。
中心周波数 21.7MHzのフィルタ(右)と58MHzのフィルタ
LA1143
LA1143 の入力周波数に対するSメータ出力の依存性を測定した。
5.5MHz と 10.7MHz では差があまりないが、21.7MHz では少し出力が下がっている。
総合性能
SGから信号を出し、スペアナアダプタ全体の出力
(Low pass フィルタから入力し、ミキサ、ハイパスフィルタ、TVチューナ、
バンドパスフィルタを通った後の、LA1143の出力)をフィルタを変えて測定した。
5.5MHz のフィルタを使った場合が最も感度が悪く、
21.7MHz の場合が感度がよい。スプリアスが出始めるのは、
10.7MHz のときに -40dBm から、21.7MHz のときには、-30dBm からであった。
これはスプリアスの元が TV チューナであり、変換効率が 10.7MHz と 21.7MHz とで
10dB 異なるためと考えられる。
当面 21.7MHz のフィルタを使うことにした。
次に 21.7MHz のフィルタを使った時のオシロの表示の様子を示す。
入力周波数は、436.375MHz で、横軸は 2[MHz/div], 縦軸は 0.5[V/div]もしくは
1[V/div] である。目的のピークの横に子供がいくつもいるので、感度を落し
て、10.7MHzのフィルタを利用した方が良かったかもしれない。
-90dBm(0.5V/div)
-80dBm(0.5V/div)
-70dBm(0.5V/div)
-60dBm(0.5V/div)
-50dBm(0.5V/div)
-40dBm(0.5V/div)
-30dBm(1V/div)
-20dBm(1V/div)
-10dBm(1V/div)
参考文献
- 特集 秋月電子のキットを完璧に作る
「500MHzスペクトラムアナライザー・アダプター・キット」,
JJ1GRK 高木 誠利, CQ Ham Radio 1997/11, pp. 123-130, CQ出版社
-
秋月特選キット スペアナキット製作てんまつ記,
JA1CVF 岡田 圀昭, モービルハム 1999/2, pp.32-39, 電波実験社
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