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[nikomat:10042] Re: stereo ( was: finder screen for medical nikkor )



ひうら@きょうだいです。

えらくはありませんが、ステレオはまあ、関係してますので。

> ステレオニッコールが話題ですが、(と一応nikomat-mlしておいて)
> ステレオ写真って、みんな飛び出す絵本のようにみえませんか?

> ステレオ写真の場合、各コンポーネントが紙に描かれたようで、
> 広い空間についたてが何枚も立っているように見えてしまいます。

> これって、
> ・中原の目ないしは視覚中枢神経の異常
> ・論理的に説明できる現象
> どうなのでしょう?

まず、いわゆる両眼視差による立体視は、あまり正確ではない、というか、
分解能がないということです。たかだか 6cm 前後のベースラインで、
筋肉によって方向が駆動される眼球の精度からいって、それほど高精度
な測距はできません。

また、fj でも書いたように、人間の目は中心の分解能は高いですが、
周囲はそれほどでもありません。ですから、一気に立体間を感じて
いるというよりも、眼球の輻輳運動(つまり、内目/外目の調整)を
併用しているというのがあります。

あとピントあわせのメカニズムですね。これも、かなりパンフォーカス
なので、距離測定にはあまり効いてきませんが、写真鑑賞のように
近くの場合は違和感が発生しますね。ちゃんとしたビューワを使うと
別ですが。

心理学の実験で、どの機構がどれぐらい測距に寄与しているのか
の研究結果もありますが(ちょっと手元にない)、実際、たいしたこと
ないです。どれを使っても 10m かせいぜい 20m が限界のようです。
精度は、言うに及ばず。ただし人間の常で、相対的評価(どちらが
より手前にあるか、など)は割と得意です。

ということで、普通に(人間の眼球と同じ長さのベースラインで)
ステレオ写真を撮ると、あまり立体間がなくなってしまうので、
ベースラインを長く取るとか、鑑賞時の視野角を実際の視野角
よりも小さくするとか、そういう工夫で誇張している場合が
あるわけです。

また、上記3要素全てが正しいような立体視装置はほとんどありません。
(NTT だったか、ATR だったかの研究で、これらをばっちりやりましょ
ってのがありますね。レンズ系で視度も変えてます。でも完全ではない)

画像の視野角と光軸(つまり無限遠に相当する点への視線が、至る方位
で平行で、かつ視野角が狂っていない)がちゃんと調整されていれば、
前2者の整合はステレオ写真でもちゃんと実現出来るのですが、
ビューワの性能に因るでしょうね。

で、ローカルな立体感、つまり物体そのものの凹凸に関しては、
実はほとんど視差は使われていません。これは、光源による陰影のつき方、
テクスチャの歪み、自分が動いてみて確かめる、先験的知識を用いる、
などによります。写真の質がよいと、立体写真でなくても、4ツ切
ぐらいに伸ばせば没入感覚を味わえるのは、みなさんご存じでしょう。

#スピーカの間に飾るといいらしい。

こういう別の手がかりに乏しい場合は、視差が強く現れるエッジ
付近の情報を元に補間したようになって、平面的な感覚を
覚えるのだと思います。エッジでは、視差そのもので距離を感じて
いるというよりも、視差によって手前の物体が背景の物体を
隠す度合いが左右の目で異なるので、その差の領域を脳の処理が
畳み込む段階で距離差を知覚していると考えられます。

つまり、テクスチャに富んでいても、連続的であれば、あまり
立体感は得られないことになります。ランダムドットステレオ
グラムでも、連続的な距離感の表示が可能(そういうものもある)
ですが、実際には段階的な距離マップでステレオグラムを作る
ことが多いのは、そのためでしょう。

立体感のあるライティングとか言われるのも、この「光源による陰影の
つき方」を人間が立体感の把握に利用しているということの証拠でも
あります。ですから、

> たとえば、ヌード写真のステレオは物が連続的な立体でもディテールが無く、
> マッチングしにくいですよね。

というのではライティングが重視されるのでしょう。
Computer Vision の分野では Shape from Shading と呼ばれます。

> 入れ墨のヌードならよろしいかと思いますが、(あるいは何かを投影する)

レースカーテン越しの光とか、よくありますよね。
Shape from Texture か、Active Rangefinder か。