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[nikomat:15488] Home made 620 spool



長文堂でござい。

東京巡業から帰ってきました。
週末から風邪引いて体調ボロボロ。それでも、ちゃんと大手町まで
たどり着きました。なぜ、体調がボロボロになったかって?

中古カメラ市初日に購入したメダリストが悪い。亀裸があるのにフ
ィルムが無くて試写できないのは辛い。620スプールさえ有れば。
師匠は追い打ちのプレッシャーをかける。

馬込師匠:
>そういえば、長文堂さんは、メダリストを枕にして寝ているかしら?
>奥様には、オリンピックにちなんで買ったんだ! と言えば通じるかもね。
>
>とつぜん、こやのさん:
>
>120/220が使えるように、こやの製作所で加工してくださいよ!
>レチナハウスでできて、こやの製作所で出来無いってことないすよ。

そこまで言われれば、620スプールは自作できないだろうか?
工作の達人にお伺いを立てる。「削り出しでつくればいいじゃん」
と一言で斬り捨てられる。筑波大学で最高の技術を持つ達人なら
簡単だろうが、薄物の切削加工は高等技術です。刃物の研ぎ方、
品物の押さえ方、削りの段取り。今まで避けて通ってきた技術で
すが、低温の実験装置は基本的に薄物。技術が実験に役立つのは
間違いなし。しばし悩んで挑戦してみました。

土曜日曜に大変な手間と時間をかけてやっと出来ました。丸棒削
り出しの620スプール。

結果として、なぜ620スプールがヲタク亀裸屋でも市販されて
いないかわかった。作るのが大変なんです。620スプールはツ
バの厚さが0.5mm。金属のプレス+スポット溶接で作られてい
ます。この量産性の悪さが120(プラスチックだから鋳型に流
し込んで作れる)に滅ぼされた理由でした。
何万個も作るならプレスの金型を作ってもペイします。しかし、
数十個〜数百個つくるなら削り出しの方が安い。ところが、これ
を削り出すには旋盤+横フライス+縦フライス+溶接、しかも薄
物だから品物を工作機械に取り付けるのが難しい。さらに、使い
捨ての刃物(スローアウェイの超硬チップ)が使えないのでNC
機器が威力を発揮しない。

ヲタクだって、スプール一個に出せるお金は多分1000円ぐら
い。量産してもこの金額じゃ出来ない。1個5000円位になる
と思う。MLリング作るのより金がかかるかも。そうなったら、
誰も買わない。だから、620スプールは市販されない。

と、云うわけで、懲りました。たなべさんから届く620フィル
ムに期待します。

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とにかく、TMYとRDPIIを巻き替えて試写しました。
ヘリアーと同じ構成のエクターレンズ1000/3.5の描写は如何に?


凄いんです、これが・・・・。

とても戦中派レンズとは思えない。開放でもかなりシャープ。
F8位まで絞ると下手な35ミリ版レンズよりもシャープ。周辺
までよい。トーンも豊か。アベノン的な強コントラストではない。
モノクロネガはニンマリするような調子。前後のボケは文句無し。
2線ボケは無く、ズミクロンに見られる丸ボケの周辺に光が集ま
る傾向は僅少。リバーサルの発色も、とても暖色系で、家族写真
にはもってこい。妙に立体感のある描写です。AiSニッコールや
京セラツアイスより濃厚な味わいがある。

う〜ん、と唸ってしまった。レンズの進化とは何だったのだろう
か。まあ、6x9版の100mmという長めのレンズだから設計
が楽だと言うこと、カラーバランスや、ハデな発色を狙ってコン
トラストを上げることを全く考えていないから良いのかも知れな
い。ストロボ同調させたRDPがこんなに柔らかい調子になると
は・・。

とにかく、メダリストにハマりました。F用ニッコール、M菌、
間宮6などを経て、次はコダック、遊び心です。

−−−−−後半に続く−−−−−−−


古谷野 有@筑波大学低温センター
koyano@bk.tsukuba.ac.jp