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[nikomat 6559] Patent




茨城大学の乾です.

御無沙汰しています.8月5日までの予定で,ヘルシンキ工科大学に居候
しています.

当地は一番日が長い時期でして,夜も11:00ごろまで明るくて,なんだか
変な気分です.けっこう気温は低くて,長袖のシャツやジャケットが
欠かせません.

ところで亀レスになりますが,私もなぜか大学で特許のことに関わりが
あって,弁理士さんをよんで特許の講習会なぞを企画したりしています.

最近大学で特許のことを色々言うようになったのは,以下の理由があると
思います.

(1)一種の外圧:つまり米国の大学は特許で研究費用を稼いでいる(実は
これはかなり嘘ですが),一方日本の大学は研究費用を国からもらうばか
りでけしからん.少しは稼げ.

(2)同じく外圧:大学はもっと地域の企業に貢献せよ.つまり研究の種を
地域企業へ提供せよ.ただし企業としては,権利関係があやふやな技術
は使わないので,特許化しておけ.

(3)特許庁や科技庁の仕事作り:各省庁ともリストラ対策として,大学の
研究成果を事業化する企画を出しており,それに大学が乗せられている.

(4)一部前向き教官の動き:どなたかも書かれていましたが,大学の
「物作り系=開発系」の教官は以前から特許化に熱心でして,そういった
方々がチャンス到来という感じで積極的に発言しています.

まあ,色々な事情があって,特許が大学の研究に良いか,さらには人類の
進歩に有益かどうかは,本当に難しいテーマだと思いますが,個人的には
研究成果を公開する手段が増える,という意味で歓迎しています.

つまり,

(1)(これもどなたかが書かれていましたが)研究には論文化に向くものと,
特許化にむくものがあって,従来は前者のみが教官の研究業績になって
いましたが,今後は後者も業績に認められるという意味で,教官評価の
幅が広がった.

#もちろん弊害もあるでしょうが,現在もつまらん成果で論文を溢造する
#方が多いので,その辺の事情は同じでしょう.それに大学にはあまり
#予算がないので,つまらん防衛特許は出しにくいです.

(2)研究を実用化する可能性が広がった.われわれが論文で研究成果を
報告しても,それが実用化されることはあんまりないですね.その理由
の一つとして,企業はきちんと権利化されていない技術には手を出さない,
というのがあるようです.このあたりが改善されるかも.

(3)研究費用が増えるかも.まあセコイ期待ですが...でも地方大学の
教官になってはや7年.いつも,いかに研究費用を稼ぐかに頭を悩ませて
いますので,そういう期待も少しはあります.

#さすがに,いげたさんが書かれているように,特許で運営しようという
#ATRは無謀だと思うけど.

私も今年の2月に,はじめてあるソフトウェアに関して特許出願を経験
したのですが,個人的には弁理士さんと色々打ち合せなどをして,
けっこう楽しい経験でした.

企業の場合,自社の技術を守り,製品の売上を確保するという意味で
特許が使われることが多いでしょうから,どうしても特許のネガティブ
な面がクローズアップされるでしょうが,大学の場合,研究成果の
評価方法が広がったという意味で,ポジティブに考えてもいいように思い
ます.

米国の技術者や研究者と話をしていると,「これが俺の特許だ」という
感じの議論になることが多いのですが,確かに自慢するだけあって,
有効な技術が多いし,あんまり否定的な印象はないのですがね.

以上,ニコンとは無関係なことを長々と書きました.

お許し下さい.

では.