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[nikomat 8403] Re: Ai 50/F1.8S+Critical point question



日浦です.

まったく専門外(情報系 ^^;)ですが,

> 脱線ですが、今、研究室(生物系)で話題になっていたので教えていただきたいです
> 。>物理の方々
> 今回の東海村での事故も納まりつつあるようですが、あのような臨界点オーバーの連
> 鎖反応事故と原爆の核爆発には質的な違いがあるのでしょうか?それともスピードと
> 規模だけの違いでしょうか? 最初に「臨界点を超えた」と聞いた時には暴走して爆
> 発かメルトダウンでもするのかと思いましたが、そういうことは起らないだろうと判
> 断できる理論的背景はあったのでしょうか。例えば、「ウランの絶対量が少ない」と
> か?事故の深刻さの度合いが把握しにくく感じてます。深夜のテレビではあまりいい
> 解説は聞けなかったです。

ウランのような放射性物質は自然に核分裂してますが,このとき中性子を
出します.この中性子が他のウランに衝突するとまた分裂を引き起こすのですが
通常は二次的な分裂の数は最初の分裂の数より少ないという
状態になっています.

しかし放射性物質がある一定の密度・一定の量を越えると,この連鎖反応の
増加率が1を越え,一気に多数の原子核が分裂するようになります.
これを臨界というのですが,通常,臨界すると,そのエネルギーなどで
核物質は瞬間的に飛散したり臨界の量を下回ったりして反応が収まると
いうことです(超高濃度のものを高圧縮しないと爆発しないのかな??
よく知りませんが).
今回の濃度では8kg 程度で臨界に達するそうですね.

#メルトダウンした後爆発すると言うのは,メルトダウンした部分が
#地下水に接触するなどして爆発するということだったと思います.

ただ今回は,沈澱(ウランの粉末を硝酸に解かし,それをアンモニアで
中和することで沈澱を作る・・というのを繰り返して生成するそうです)が
出来る反応中の臨界ということで,沈澱が次第に貯まる状況で
何度も臨界しているんじゃないでしょうか,というような報道でした.

今回は 16kg 程度のウランの反応ということですが,原発では3トン
ぐらい入っているそうなので,まったくその量が違いますし,
メルトダウンするようなことは絶対ないそうですが,こういう濃縮
過程で瞬間的に臨界するという事故は有り得るようです.

#こういうことが絶対に起こらないように,一度に取り扱う量は
#厳しく管理されており,また容器のサイズなども小さくしておくという
#原始的な設計方法になっているそうなのですが,今回は守られていなかった&
#通常行われる作業より濃度が高かった(通常の原子炉用(3,4%?)ではなく,
#高速増殖炉用(18%?)だったらしい)ということで,事故が起こったと
#いうことがいまの段階では言われているようです.

ちなみに原爆は,これよりもさらにもっと高濃度(90%とかだったと
思います.しかもウランのなかでも特に反応しやすい原子量のものを
選択的に精製するのだったか)のウランを使い,一気に圧縮して
反応させるので,ああいう爆発が起こるのだと理解しています.
でもスピードと規模の差で,起こっていることは同じと言えると思います.

#私も東海村で「臨界がいまも続いている」と聞いたときはどこかの炉で
#事故が起こったのかと思いました

原子炉は,もっと濃度の低いウランを使っているようですが,中性子を
減速(水で減速される)するとウランに衝突したときに核分裂を引き起こし
やすいそうで,反応が続くようです.(沸騰水型原子炉では,温度が
上がり過ぎると気泡が出来るので自然と反応が減衰するという効果が
あるそうです.)でも今回は水溶液での事故のようなので,
このへんどうなのか?というのも気になりますね.

では

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 日浦 慎作  Shinsaku HIURA
 大阪大学大学院 基礎工学研究科
 システム人間系専攻 システム科学分野
 〒560-8531 豊中市待兼山町 1-3
 TEL:06-6850-6372  FAX:06-6850-6341
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