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[nikomat 12871] Re:羽油(続報)
お久しぶりです。冬眠から目覚めた川口です。
ニコンのSCではヘリコイドグリスをオイルで薄めての固さを好みに
調節してくれるという話が以前にあったと思います。
サービスとしては親切だと思いますが、経時変化が不安です。
グリスはオイルにタレ止め剤を添加して作ります。
タレ止め剤はオイル中にコロイド状に微分散して、コロイド間の
相互作用によってオイルを半固形の状態に保ちます。
タレ止め剤はコロイド状の状態で働くが故に、オイルとの相性が
あり、オイルの化学構造によって使い分ける必要があります。
このようにして作られたグリスに他のオイルを後から加えて
薄めた時には、グリスが安定である保証は無いと思います。
「固い」グリスといった場合には、ニ通りのものが考えられます。
1.ベースとなるオイルの粘度が高い。
2.タレ止めが強く効いている。
1は水と水飴の比較をイメージして下さい。水飴は固いですが、
傾けておくと、そのうちに流れます。
2は水とマヨネーズの比較をイメージして下さい。マヨネーズは
へらで伸ばす時には水飴ほどの力は要りません。
しかし、傾けておいても元の形を保持します。
さて、グリスをオイルで薄める場合を考えます。
グリスの原料オイルの粘度が高い場合、低粘度のオイルで希釈すると
「柔らかく」なります。これは主に1の効果のためと言えます。
しかし、この時にタレ止め剤の濃度も低下してしまいます。
加えたオイルが多い場合、タレ止め作用が弱くなりすぎ、
放置しておくうちにグリスが自然に流動してしまう恐れがあります。
では、まっとうな「柔らかい」グリスはどのようなものでしょうか。
それは、低粘度オイルを原料として、放置しておいても流動しない
ような量のタレ止め剤を添加したものでしょう。
だから、ヘリコイドの固さをカスタマイズするためには、原料オイル
の粘度が異なるグリスを数種類用意する必要があり、グリスをオイル
で薄めての固さを好みに調節というのは手抜きではないかと思います。
さて、
> Ai20/3.5を羽油で新宿SCにOHを頼み、フィルム1本通しただ
> けで防湿庫で寝かしたら2年経たずに酷い羽油になったことは既
> 報のとおりです。油べたべたでF8より絞りが小さくならない(
> あるいは正7角形にならない)状態でした。
とのことですが、柔らかいグリスを入れた経緯はありますか?
この辺が原因ではないかと思うのですが。
違っていたら御免なさい。
yujiro kawaguti(川口 裕次郎)
e-mail ykawa@olive.ocn.ne.jp