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[nikomat:03878] Re: Nikkor VS Sonnar (5cm)
ひうら@きょうだい#影の研究モードです。
ちょっと(といいつつ、たくさん)計算してみました。
> > #ずれると言っても、像で言えば線の幅、被写界深度スケール中で十分収まるぐらい
> > #のずれですが・・逆に言えば、訓練を積めば被写界深度よりもかなり高精度に距離
> > #が出せそう。遠距離なら、そもそもずれないし。
> そう、そのため、RFでは距離合わせがちょっと失敗したかなと思っていても
> 50以下なら、出来上がった写真は結構見れたりするんですね。
> 85(F2の開放近くで)で割とシビアになります。
まず、50mm/F1.4, 撮影距離 1m, 許容錯乱円直径を 1/30mm とします。
焦点深度は 0.047mm.被写界深度は 前後各 2cm となります。被写体の
上での錯乱円直径は倍率から 0.67mm です。
基線長 6cm の距離計で 2cm 奥行きをずらすと、被写体上で 1.2mm の
ずれが生じます。逆に言えば、1m 離れたところの二重像のずれが、1.2mm
以内なら焦点深度内ということになります。
ここで距離計は正しく 1m 先の点に合っているとし、目は正しい位置にあると
します。ファインダ像と、ミラーで曲げられた可動像はそれぞれ目から 1m,
1.06m の距離にあり、一致しています。このままカメラを固定し、目の位置を
右に 1cm ずらしたとすると、可動像はファインダ像に較べ、見掛け 0.6mm
動いたことになります。これは被写界深度の範囲内です。
これは目が上下に動いても同様です。ただし、上下のずれを左右の距離計で
補正すると、斜線の角度の tangent で計算されるだけずれるので、水平に
近くなるほど誤差が増大します。しかし、実際には目の位置はがんばっても
2-3mm ぐらいしか動けないので問題ないでしょう。
次に、倍率について考えます。像の倍率は 1:1.06 です。50mm レンズ、1m
では左右に 72cm 写ります。可動像の範囲を、ファインダのブライトフレー
ム像の 1/8 の大きさとしますと、左右で 90mm です。可動像は 1.06倍
だけ小さく写りますから、ファインダ像で左右 90mm の物体は、85mm に
なって写ります。その差 5mm ですから、中央で(正しく)合わせた像は、
左右で見掛け 2.5mm ずれていることになります!被写界深度の倍近くです。
しかし、実際には、可動像のはしっこで合わせることはないので、これ
ほどはずれません。中央で合わせればよいわけです。
しかし、瞳位置によって、この「中央」がずれるのです。
つぎに、瞳の位置と、可動像の視野範囲について考えます。瞳はピンホー
ルでパンフォーカスとし、可動像の範囲は測距窓によって決まるとします。
また、目から第一のプリズムまでの距離を 2cm とすると、測距窓は目から
8cm 離れているので、窓幅は 7.2mm です。ということは、瞳が 3.6mm
左右に動いたとすると、元の光軸と平行な光軸はもはや測定距離窓の
端まできていることになります。この場合はこの光軸の上で像が一致しま
すから、可動像の中心はすでにさきほどの倍率の効果でずれが発生して
いるはずです。
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かなり近似計算が入っていますが、これはだいたい実際の値と合って
いるかなと思います。
結局、目の位置と、倍率の相乗効果で誤差が出る、ということだと思い
ます。実際には、目はずれてもせいぜい プラスマイナス2mm 程度(これ
以上だと明らかに覗きにくくなり異常)ですので、このときに可動像の
ずれは 1.4mm となり、被写界深度プラスアルファといったところです。
もちろん、目が右に移動しているときに、左はして測距すると、もっと
ずれます。
このあたりが「標準レンズで被写界深度程度の精度」の根拠でしょう。
そもそも、50mm/F1.4 + 1m で被写界深度内に納めようというのはかなり
欲張り(前後に 2cm 動いたらアウト)なんですけどね。
1m の距離から 1mm のずれというのはわりと大きいものなので、この
「倍率の差」は(買って帰った晩に気付くぐらい)良く分かりますが、
そんなに悲観的なものでもないと言うことでしょう。と、言い聞かせる。
#遠距離では上記の問題は発生しない。
像までの距離、つまり視度や、近接時の倍率を合わせるには、ファインダ
側の光路を曲げて距離を稼ぐ方法があるかな、と思います。でもこれはやっ
てないでしょう。あとはレンズ系で合わせる手があると思いますが・・・
距離計窓から見て、目の虚像が、基線長の分だけ近くなるような光学系を
考えればよいのでしょうが。
一度入射した光を結像させ、ここに可動像のマスクを置いて、これをもう
一度平行光線に直す光学系ならOKかな。M3, こんな風になってます?
こういう方法だと、可動像の外枠の視度は無限遠ですから、その境界線が
はっきりするというメリットもあります(M3 はそうですよね)が、目の位
置によってその視野範囲が移動するということも防げますよね。もしかし
たら、この効果もあって、目の位置によってずれがないのか??と、計算
の結果思いました。
#またどこかでいじり倒そう。
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つぎに、一眼レフと比較してみましょう。
一眼レフのスプリットプリズムを使うことを考えると、あれは F4 の光束を使っ
ていますから、基線長としては 50/4 で 12.5mm。で、倍率を考慮すると 10mm
程度です。
で、同じように計算していくと、被写界深度内にピントを合わせるためには、
1m先の像で、0.2mm のずれを感じないとだめです。スプリットプリズムは上
下像合致式なので生理的に差が分かりやすいといわれているのですが、やはり
(良く言われるように)開放F値の大きなレンズをスプリットプリズムで合焦
させるのは無理があります。
しかし、一眼レフでは、レンズの焦点距離が延びるごとに、像の倍率と、
F=1:4 の口径が共に大きくなってくるので、有効基線長が2乗の速度で改善
されます。135mm を越えるとすでにこちらのほうが正確になります。生理的
効果を考えると 100mm 程度で RF とすでにコンペティティブでしょう。
さらに言うと、一眼レフでは距離計とレンズの機械的誤差がないので、
そういう意味での誤差も少ないです。50mm/F1.4 の焦点震度は先に挙げた
ように 0.046mm なので、フランジや距離計コロが 0.05 mm ずれたら、こ
れまでの議論以前にアウトです。
では。