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[nikomat:08667] Re: Ais35-70&Kimura
榎@物質研です。
At 10:21 97/09/29 +0900, Tamotsu KOYANO wrote:
....
> >> 使いモノにならんといっておられました。法隆寺、薬師寺、東大寺
> >> 大仏殿の鉄はちがいますねぇ。1000年たってもサビは表面だけ。
> >> 芯まで行かない。
> >現代のものと何がちがうのですか?どうやったら、1000年経ってもサビが
> >芯まで行かないようにできるのでしょう?不純物濃度の極めて低い鉄はさび
> >にくいっていう研究は、どっかで読んだことあるんですが、、、
>
> この辺は、榎さん@物質研のご専門(のソバ)ですからそちらに任せます。
> 電気化学はわかんないんで。:>
>
> 不純物には2種類あるようで、、、、
> 1)タチの悪くない不純物 (入っていてもサビには関係しない)
> 2)タチの悪い不純物(ちょっと入っているだけでサビが激しくなる)
>
>
> 古い鉄には2)がホトンド入っていないようです。サビだけでなくて、微量な
> 不純物がいろいろと鉄の特性に影響を与えているようです。鉄の精錬法の
> ちがいによるそうです。明治以降の西洋スタイルの大量生産鉄はダメ。
> 昔の手間のかかる鉄が良い。江戸以前の建物はいつまでも持つけど、明
> 治以降の建物は200年ぐらいたったら全てボロボロでしょうなぁ。
> 未来の人類は、明治以降には建築物が無かった なんて結論するかも。
このタチの悪い不純物というのは、たしかP(リン)とかS(硫黄)なんかだった
思います。(もう忘れてしまった(^_^;)。)
これらは鉄鉱石を製錬するときの石炭(コークス)から入り込みます。
現代(明治以降)の製鉄技術というのは、鉄鉱石とコークスを高温の炉の中に放り
こむことにより酸化鉄を還元してドロドロに溶けた鉄にします。このときの鉄(銑鉄)
は非常に炭素が多く含まれている鉄ですので、融鉄中に酸素を吹き込んでやって
炭素を取り除きます(製鋼過程)。このようにコークスと一緒に溶かしてしまうため、
どうしてもP(リン)とかS(硫黄)などの不純物が入り込んでしまいます。
これに対して明治以前の製鉄技術では、高温に対する技術が全くなかったため、
鉄を溶かすことなど不可能でした。そのため砂鉄などの自然鉄を叩いて固める鍛造し
か出来なかったというのが真相です。そのためP(リン)とかS(硫黄)などの不純
物を混入しなかったんです。つまり、昔の人が1000年もつ材料を見つけたんでは
なくて、昔の方法ではたまたま1000年もつ材料しか作れなかったんです。
でもこの方法だと、絶対に大量生産は不可能ですね。
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榎 浩 利 通産省工業技術院物質工学工業技術研究所
Hirotoshi Enoki E-mail : enoki@nimc.go.jp
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