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[nikomat:11028] Re: [OTF]
日浦@京大です。
また、まごめさんから詳しい話があると思うのですが、
ここでいう位相は波動的な位相ではなくて、いわゆる空間周波数の上
での意味での位相ですよね。つまり、理想的な無収差のレンズ
で撮影される像(これは像面上の各点の明度の分布であって、もはや
光の波動的な性質は無関係)が、実際のレンズでは収差によって
ぼけたりするわけですが、これらのフーリエ変換に起因する位相です。
言い換えると、これらの画像を 2-D の画像面上でフーリエ変換すると、
そのときに明度値(つまり実数成分のみ)であったのが、各空間周波数に
関する振幅と位相に変換されるわけです。
例えば簡単な例として、像が平行移動した場合を考えます。
このときの収差のカーネルは、原点から平行移動したデルタ関数に
なります。このデルタ関数のフーリエ変換が、まさしく OTF に
なるわけです。簡単のために 1-D で考えますと、
原画像 s(x) : source
撮影画像 o(x) : observed
ぼけ核 k(x) : kernel について
ぼけの生成過程
o(x) = k(x) * o(x) ( * はコンボリューション) ---(1)
また、
k(x) = δ(x - a) (a は平行移動量) ---(2)
ここで (1) をフーリエ変換すると、
O(t) = F{k(x) * s(x)}
= F{k(x)} ・ F{s(x)}
= ∫ k(x) e^(-j2πxt) dx・ S(t)
= e^(-j2πat) S(t) ---(3)
S(t), O(t) は画像のフーリエ変換
となり、OTF は単位円上をぐるぐる回ることになります。
振幅は常に1ですから、画像の情報は全く失われていない。
(MTF が常に 1 であるということ)
もちろん、画像は平行移動されただけですから。
でも、位相 (PTF) はぐるぐるまわります。
(ずれのない場合、 つまり a = 0 で e^(-j2πat) ≡ 1 ですから、
これはもちろん原画像ということになります。)
それでない場合は移相されることになります。
> > >>位相の遅れがないほど、急峻な立ち上がりがよくなります。
> > >>(いわゆる、波形がなまらない)
> > >>位相は制御では重要な意味があります。 遅れが生じるからです。
つまり、上記の「画像の平行移動」は、全体としてみればまさしく制御で
言うところの「遅れ」(むだ時間系)になるわけで(時間方向にずれる
わけだから)、その中身は、フーリエ変換してみると、なるほど各
周波数成分の遅れの合成ということになるわけですね。
まごめさんのおっしゃるように、位相遅れが直接的に画像のなまりに
結び付くかどうかはわかりません。僕はそうは思わないのですけれども。
なぜなら、ボケカーネルは画像の中心では対称型で、つまりは偶関数です。
偶関数のフーリエ変換は移相しません。つまり MTF = OTF です。
画像の周辺では対称でないボケ(つまりは球面収差や像面湾曲以外の収差)
や歪曲によって移相しますが、これとて波形のなまりの主要な原因は
MTF 成分で表されるのではないでしょうか。なぜなら、実画像は実数で、
OTF の逆フーリエ変換は実数 --> 実数の変換ですから、このうえで MTF = 1
なら、PTF 成分は平行移動成分のみということになると思うのですが。
(MTF = 1 でない場合は、コマ収差のコマの形状とかは PTF によって
変化するでしょう。なまりに結び付くかどうかは分かりませんが)
> > んでもって,OTFへのつながり方としては,周波数特性・位相は
> > 画像の空間周波数に関係したものであって,光波としての周波数や
> > 位相の話しじゃないんですよね。
そのとおり。
光路長とか、光の位相「差」も光学では重要ですが、
画像の上に落ちてしまえばもはや関係ないわけですね。