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[nikomat:18414] Re: tsume on Ai50/1.8



ひうら@きょうだいです。

> >  > Ai Nikkor           2.0     22         クセノタール 1977         52
> >  > Ai-S Nikkor         2.0     22         クセノタール 1980         52
> > 
> > あれ?
> > この2つ オルソメター(= クセノタール)でしたっけ?
> > 
> > # エルノスター/ゾナー かと思ってた。
> > 
> > 後ろから2枚目の玉が パワー:0 なら オルソメター
> > パワー:+ なら ゾナー に なるはず。
>
> 「写真工業別冊」および新品ニコン購入時にニコンから送られてきた
> 「新・ニコンの世界」(EMのときの号とFE2のときの号の2冊)をみると
> Ai(写真工業別冊及びEMの号)、Ais(FE2の号)ともにクセノタールタイプ
> と紹介されてます。
> 後ろから2枚目の玉は、メニスカス凹(断面図を見ると、2枚の同心球面で
> サンドイッチされたように見える)でパワーは0に近そう。

僕も昨晩、構成図見ながら考えてみました。

まず、オルソメターについて。
普通オルソメターというとジナーとか、Nikkor-W のような
準広角大判レンズのように、 2-1 | 1-2 (| は絞り)と配置された
対称型の広角レンズのタイプを指すと思います。

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で、クセノター系 とエルノスター/ゾナー系についてですが・・

エルノスター/ゾナー系は、いわゆるトリプレットの血を引く
系統で、

トリプレット --+--(後群改良)--> テッサー  -----+
               |                               |
               +--(前群改良)--> エルノスター --+
                                               | 
                            ゾナー         <---+

という系譜を辿る非対称系ですね。
ツアイスの一派が改良を続けた方式と言いますか。

エルノスターはトリプレットを明るくするために前群を分割
して、2枚の凸レンズに置き換えたものです。

ゾナーはエルノスターの 「凸 凸 凹 | 凸」 の第2・第3群
の間をレンズで埋め(実際、このレンズは低屈折率ガラスを
使っている)、また後群をゾナーと同様に張り合わせ(つまり
後群の張り合わせレンズのうち、凸レンズは高屈折率ガラス)
にしたものと考えられます。

つまり構成的には、ゾナーの第2群の3枚張り合わせのうち
前の1枚目はそもそもトリプレットの1枚目から来た成分で、
3枚目は凹レンズの成分です。間のガラスは元々空気だった
もので、例えば CONTAX T2 のゾナーは、ここは空気に先祖
帰りしています。

で、この方式の特徴は、トリプレットの「凸 凹 | 凸」の配置
を見れば分かるように、絞りの前に凹レンズの成分が集まって
いることです。その証拠に、オリジナルのゾナーを含め
後群は凸レンズの成分を持ち、絞りに最も近い面でさえ、絞側に
凸であることが多いです。

後群が3枚張合わせのゾナーでは、中央の強い凸レンズに
最も高い屈折率のガラスを用いていますから、4つの面は
すべて凸レンズの効果を持ちます。

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それに対してクセノターは、ダブルガウスの省略形、つまり
ダブルガウスの 1-2 | 2-1 のうち絞り後側の張り合わせレンズを
単なるメニスカスレンズにしたものです。

このタイプの特徴は、絞りの中心に対して、両側のレンズの最も近い
面が内側に湾曲するような配置(絞りを中心として「空気レンズ」が
凸になっている)があります。これは、ちょうどトリプレットが
「凸  凹  凸」となっているのと同様に、レンズ中央に強い
凹レンズ成分を持ってくることによってペッツバール和条件を
満たすためです。

つまり中央の凹レンズの役目が、絞りの前後に渡っているか
どうか・・言い換えれば、この凹レンズをガラスで作るか、
空気で構成するか・・というのが、違いです。
ゾナー系は前者、ダブルガウス、プラナー、クセノタータイプは
後者です。だからこそ対称型と呼ばれるゆえんでもあります。

#ちなみに、両側が同心球の面であるメニスカスレンズは、
#全体としてみても凹レンズです。同心球の中心の側から
#見れば、「強い凹 - 弱い凸」という配置になっています。

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よしださんも、「後ろから2枚目の玉が・・」という分類を
言っておられ、大部分のレンズではほぼ同様の結果となると
思うのですが、僕がよいと思う(強引な)分類法は、
「絞りの直後の面が、絞りに対して凸か凹か」です。
こう考えると、例の Ai-S85mm/F2 は紛れもなく対称型に
属することになります。
対称型のなかでは、クセノタータイプと言えるでしょう。

しかしこれらの間が互いに影響して、似た者になっていることは
確かです。例えば 1-2 | 2-1 の標準的なダブルガウスレンズは
現在ではほとんど、前の張合わせを分割することでコマ収差等が
改善されているそうですが、これなどはエルノスター方式の
前群とも言えます。またゾナー系でも、後ろの群は全体として
凹 - 凸のパワー配置になっていることが多いはずです。

では