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[nikomat 4670] Re: [Q]Film latitude?
日浦です.
ネガの場合についてご説明します.
田中さん:
> フィルムについて、よく[a.階調が豊か]とか[b.ラティテュードが広い]なん
> て表現しますよね。このaとbが同時に成立する理由がわからなくなりました。
> まず、
> a:被写体の明度を忠実にフィルムの明度として記録する
> b:適正露出の駒と、露出かはずれた駒に極端な差がない
> ですよね。
階調が豊か,という表現が,どのようなものをさすのかが難しいところ
ですね.場合によっては,白飛び・黒つぶれしにくいというときにも
使えそうな言葉です.
もしくは,中間調の分解能がよい,という話もあると思います.
だから,ちょっと曖昧性があるので,ここでは,「コントラスト」と
「ダイナミックレンジ」について述べます.
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ネガは光が当たるほど濃くなるのですが,そこに秘密があります.
強さ 1 の光が当たれば 透過率が 1/2 になるフィルムがあるとして,
強さ 2 の光が当たれば 透過率が 1/4 になり,
強さ 4 の光が当たれば 透過率が 1/8 になり,
強さ 8 の光が当たれば 透過率が 1/16 になり,
強さ 16 の光が当たれば 透過率が 1/32 になり,
強さ 32 の光が当たれば 透過率が 1/64 になり,
強さ 64 の光が当たれば 透過率が 1/128 になり,
強さ 128 の光が当たれば 透過率が 1/256 になり,
強さ 256 の光が当たれば 透過率が 1/512 になり,
強さ 512 の光が当たれば 透過率が 1/1024になり,
.........
ということが永遠に続く,(つまり無限の強さの光が当たると
透過率が0になりまったく光りを通さなくなる)理想的なフィルム
を考えることが出来ます(存在はしません.)
このフィルムの場合,光量が倍になれば透過率は半分になります.
#このフィルムで,1段オーバーに露光してしまったときは,
#ネガが全体として倍の濃度になるので,引き延ばしのときに
#光量を倍にすると,同じプリントが得られます.
#また,印画紙としては,
# 強さ 1 の光が当たれば,反射率が 1/2 となり,
# 強さ 2 の光が当たれば,反射率が 1/4 となり,
# 強さ 8 の光が当たれば,反射率が 1/8 となり,
# 強さ 16の光が当たれば,反射率が 1/16となり,
# ・・・
# という印画紙を用いれば,もとの絵が再現されます.
また,同様に,
強さ 1 の光が当たれば 透過率が 1/3 になるフィルムがあるとして,
強さ 2 の光が当たれば 透過率が 1/9 になり,
強さ 4 の光が当たれば 透過率が 1/27 になり,
強さ 8 の光が当たれば 透過率が 1/81 になり,
強さ 16 の光が当たれば 透過率が 1/243 になり,
強さ 32 の光が当たれば 透過率が 1/729 になり,
強さ 64 の光が当たれば 透過率が 1/2187になり,
強さ 128 の光が当たれば 透過率が 1/6561になり,
という系列も考えられます.このフィルムでもラチチュードは
無限に大きいわけですが,同じコントラストの被写体でも
透過率(フィルムの濃度)の変化はおおきくなるので, 硬調の
フィルムができ上がります.
#このフィルムでは,1段オーバーに露光してしまったときは,
#3倍の光量を当てれば同じ画像が得られます.
#また,印画紙としては,軟調な
# 強さ 1 の光が当たれば,反射率が 1/2 となり,
# 強さ 3 の光が当たれば,反射率が 1/4 となり,
# 強さ 9 の光が当たれば,反射率が 1/8 となり,
# 強さ 27の光が当たれば,反射率が 1/16となり,
# ・・・
# という印画紙を用いれば元の絵が再現されます.
#また,印画紙として同じものを用いたとき,前者の例よりも
#硬調のプリントができ上がる(軟調の印画紙を使うと戻る).
というようなことで,理想的には,画像のコントラストの出やすさと
ラチチュードの広さは独立な事柄なのです.
> ここでa.とb.を同時に満たすフィルムがあるとして、仮に左から右にかけてなだ
> らかに暗くなっている(-4EV)灰色の壁面を被写体と考え、
>
> 1. 適正露出(画面中心スポット測光)
> 2. 適正露出+1EV
> で撮影すると、撮影された駒は
>
> 1.画面中心が適正露出なので画面左端が適正露出+2EV、右端が-2EVのなだらか
> な階調になっている。
> 2.画面左端が+3EV、右端が-1EVのなだらかな階調になっている。
> はずですよね。
> わからなくなったのは、1.と2.の駒の同じ場所・点(ex.中心)は1EV差があるにも
> 関わらずほぼ同じ明度で記録されている?と考えられるからです。
>
> a.を考えると差があるはずが b.では差がないことになるような・・・。
上記の例で考えればよいのですが,
この場合濃度が異なるネガが得られますが,
焼きを工夫すれば同じ絵が再現されます.
それがラチチュードの範囲内と呼ばれるわけです.
では