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[nikomat 22977] Re: M6



ひうらっす.

ライカが,どういう構造になっているのかは知りませんが・・・

こういう調整機構というのは,大きく分けて2種類あると思います.


1.小さなバネとネジの組み合わせで調整
  バネの力でバックラッシュを取って,あとはネジのストロークで
  調整します.ネジの先端やあたり面が綺麗に加工されていないと
  リニアに動かないのと,相手先(調整される部分)の取り付け
  精度(回転軸の滑らかさ)も問題になると思います.
  ネジを緩めていくと,カクッカクッと動くことなんかもある.

 #計測装置なんかの微動機構も,マイクロメータを使ったこういう方式
 #が多いですよね.


2.押しネジと引きネジで調整
  大雑把に言うと,望遠鏡のファインダの調整なんかもそうで,
  3つのネジの組み合わせで上下・左右の軸を出しますよね.
  つまり,相対する関係にある複数のネジの関係で一義召します.

  この場合,バネは不要ですが,調整には熟練の技が必要と思います.
  (望遠鏡をやる人なら実感していると思いますが)

  レチナの縦ずれなんかはこの方式ですが,緩く締めていると振動などで狂い
  やすいし,だからといって硬くすると,今度はネジを最後にグッと
  締めたときに,軸がススッとズレてしまいます.

  このズレ量を見込んだ位置に合わせ込んで行って,(調整しながら
  そのくせを覚えておいて),最後にグッと締めるときの加減
  (弾性というのだろうか・・)でピタッとあわせる必要があります.

  #マンションのベランダで,汗かきながら1時間以上格闘して
  #納得いくように仕上げました.


一般に 1. の方法は,コストもかかるし,ある程度ガタイの大きい機械
でなければ組み込みにくいと思います.また,垂直・水平双方を調整可能に
するためには,やはり可動部の軸受け(回転中心)の構造なんかも難しい
と思います.

ただ,距離計の距離方向(横方向)などであれば,可動部A(たとえば距離計
コロから伸びているレバー)と,可動部B(可動部Aに押されて回転なり,
移動なりする,距離計の光学系)の間の接触部分に調整ネジが仕込んであったり
するものも多いと思います.

こういう方法だと,縦ズレを生じさせずに,うまく横方向だけを調整できます.

問題は縦方向で,これは,本来可動ではない方向ですから,2.の方法で
組んであるものが多いんじゃないかと思います.

話を聞いていると,ライカ(の初期のもの)は,縦・横軸とも,1.の
タイプかもしれませんね.これは,調整を前提とした構造ですね.
ただし,振動で緩んだり,経年変化しやすいかもしれません.
(ロック塗布は必須でしょうね)

2.は,小さいスペースに組み込みやすいのと,設計が簡単で,部品点数も
少ないので,より多いと思いますが,問題は,ネジを触ってしまった時点で,
全てがグチャグチャになる点です.縦ズレ修正用のネジであっても,普通,
横方向にも動いてしまいます.
特に,最後にグッと締め付けると,その段階であらぬ方向に微妙にずれるのが常です.
あまり強く締めすぎるとネジの先端やそのあたり面が削れて余計に合わせに
くくなるし,緩いと,持ち歩いている間にすぐずれてしまうし,難しいです.

こちらを触ってしまった場合は,縦と横が同時にあうように,一生懸命
あわせ直すしかないと思います.縦だけあわせてから,1.の構造の
横調整をすればいいかもしれませんが,近接時に誤差が乗る可能性があります.

距離計の縦・横以外に,回転方向ですが,距離計の性質(見えている範囲が狭い)
からして,回転方向は感度が低い(視覚的に分かりにくい)ので,基本的には
部品の工作段階で精度は出ているとして,無視しているものが多いんじゃないか
と思います.
2.の方法での縦ズレ修正とあわせ技であわせこむことも可能だと思います.


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 日浦 慎作  Shinsaku HIURA
 大阪大学大学院 基礎工学研究科
 システム人間系専攻 システム科学分野
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