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[nikomat 28814] Re: D1 again
長文堂でござい。
専門じゃないから黙っていようと思いましたが、
みなさまご心配のようですから。。。
ダイハード様:
> >黄変するのは内部の元素のせいで、外から放射線を当ててもだめなんじゃないで
> >しょうか?。
> >
> 放射エネルギーによる恋図を構成している物質の構造に変化がおきている
> と仮定して,次の2つのことを考えました.
天然にあるトリウム(232Th)の原子核は1種類で、232
しかありません。その232Thは半減期1.41x10^10年という気
の遠くなるくらい長寿命の放射性元素です。
つまり、全てのトリウム核は∞時間経てば全て別の元素に
変わってしまいます。
トリウム系列という放射性壊変系列の一番上にありまして、
最後は208Pbという普通の鉛になります。
ガラスにX線やγ線を当てると照射損傷が起こります。細
かいことは省きますが、原子がX線に蹴飛ばされてあるべ
き場所から別のところに動いてしまうの。そうすると空き
地に電子が溜まったりして、手頃な波長の光を吸収します。
これが着色です。何色になるかは物質によって違います。
パイレックスガラスに0.71AのX線を当てて茶色くなったも
のが手元にあるから機会があったら現物をご覧に入れましょ。
#金属は着色しません。イオン結晶など絶縁性で透明のも
#のが有名。
レンズの場合、そこそこ酸化トリウムは入っているでしょ
うが、気の長い崩壊をするので出てくる放射線の量はたい
したことありません。せいぜい数μSv/hでした。
胸部レントゲン一枚で約500μSv/h、X線CTだと
さらに強烈なはずですから、どの程度かおわかりいただけ
るでしょう。
#毎日何時間ズミクロンをレンズを抱っこしますか? −>日浦Rさま
なお、レンズから出てくる放射線は飛程の都合で232Thから
7段変化した先の212Pbがβ崩壊するときの0.239MeVのγが
主です。弱いけどいちばんエネルギーが高いのは208Pbにな
る一歩手前の208Tlが出す2.614MeVです。かなり高エネルギ
ーゆえガラスぐらい簡単に貫通するのでレンズの後ろでも
前でも大差ありません。
トリウムは、かの有名なるモナズ石など天然鉱石に含まれ
ています。理論的にはトリウムから235ウランを作れるので
核燃料関連の法規が適用されますが、効率が非常に悪いか
らそんな馬鹿な事をする人は居ないそうです。テロ支援国家
のスパイが銀座のカメラ屋でエクターや古いタクマーを買
い集める、なんて事は起こりません。
トリウムは工業的に使われていましたが原子力関連の法規
は年々厳しくなるので今は滅多に使われていないと思います。
が、過去の製品は既に市中に出回っているから黄色いレン
ズが中古屋に並ぶ。
トリウムが放射性で、ガラスが照射欠陥を作りやすいこと
は昔から知られていました。何年ぐらいカラーの撮れるレ
ンズとして使えるか設計者は想定していたと思いますょ。
#固体物理学を習った設計者なら、ね。
モノクロ時代のレンズだと黄色フィルターが要らないから
いい案配、と思ったかも。本当に黄色フィルターとしての
効き目があるかどうか光の吸収特性を測ってないから知り
ません。
結晶化しても普通はストイキオはずれないので何らかの理
由によってガラスが失透すると白濁します。これも現物あ
ります。
古谷野有@堀場の競合メーカー製SSDで測定したことあり。