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[nikomat 41782] オーディオ再び
Thommo、っす。
皆様、今年もよろしくお願い致します。
長かった年末年始休暇でしたが、ずっとアンプ作りに専念していました。
学生時代に何台もアンプを自作して以来、7年ぶりになります。
いくつか写真との共通点もあり、楽しかったです。
ものすごい長文なので、興味がない方は読み飛ばしてください。
前述どおり、学生時代に、所謂「金田式」と呼ばれる、超ハイファイなトラン
ジスタアンプを好んで作っていました。物凄くスピーカーの制動力の強いアンプ
で、しかも単一電池わずか20本で、癖のあるスピーカーも朗々と鳴らしてしまう
素晴らしいアンプです。また原作者である金田氏の独特の語り節というか世界が
好きで、もう何台も作りました。
トランジスタやFETを数十本集めて性能の良いものを選別したり、電気特性の良
いテフロンで基板を起こしたり、そりゃあはまりました。
もちろん今でも、当時作ったアンプを愛用しています。しかし、アンプを作っ
ていた最終時期近くには、ちょっと変わったスピーカーを手に入れて使っており
ました。Goodmans社のAxiom 80というかなり古いスピーカーで、通常のダンパー
の変わりに、カンチレバーでコーンを保持しているフルレンジスピーカーです。
ダンパーによるロスが少ないため非常に高能率(97db/W/m)だが、ちょっとなナロー
レンジで、どちらかというと古臭い音がします。しかし、声楽や管楽器など、ツ
ボにはまると、物凄く豊かで繊細、暖かい音色がします。
これを手に入れて満足したのか、以降はあまりアンプに手を入れず、むしろ利便
性のためにセレクタなどを組み込んで小さなケースに入れて、スピーカーも天井
から吊るすコンパクトなものに変わっていきました。
丁度、F601QDからF90Xに買い換えた頃で、写真熱が盛り上がってきたのと同時期
です。まぁ褪めてきた、といったところでしょう。
それ以降は写真道まっしぐら、いまや機材とフィルムに囲まれている日々です
が、丁度一ヶ月くらい前でしょうか、友人とスナップ撮影のためにある郊外の街
を散策していたところ、ふと目をやった家屋の窓に、「真空管アンプ試聴できま
す」の張り紙が。ほほぉ、と思って中を覗いたところ、狭い店内に所狭しとスピー
カーとアンプがひしめいていました。
なぜか妙に好奇心を刺激されてしまって、思わず店主に試聴をお願いしました。
アンプは有名なKT-88という三極管を使ったシングルアンプ、CDはThe Dave
Brubeck QuartetのTake Five。昔アリナミンVのCMにも使われた、有名な曲です。
非常にゆったりと、しかも臨場感たっぷりに演奏が聞こえます。店主自作という
ウッドホーンを含めたJBLの3ウェイのおかげもあると思いますが、結構ワイドレ
ンジで、十分音楽にのめりこむことができます。出力も十分。
久しぶりに、音楽を聞いて感動できました。
元はキットだけど、店主独自のチューニングと配線をしているので、音が違うん
だよ、完成品だったら大体8万くらいで譲るよ、とも話していました。
このときに感染したのは明らかで、帰宅してから色々とウェブを探索しまくり
ました。どうやら、以前知っていたアンプキットとはまったく違う、デザインと
コストパフォーマンスに優れたものが多いことに気がつき、驚きました。
昔のキットは、横長のボンネットの上にトランス・球・コンデンサがにょきにょ
きと生えていて、個人的には好きでないデザインでしたが、シンプルなヘアライ
ン加工されたアルミのフロントパネル、トランス全体にカバーが掛かっていたり
して、部屋に飾っても違和感がなさそうです。
まぁここまでくれば作るのは決まったようなものですが(笑)、問題は機種選定。
価格は4万前後と絞って探してみると、出力管が前述のKT-88、6L6GC、2A3、EL34
など、人気のある三極管が揃っており、好みで選べそうです。
実は金田式を作っていた頃から真空管アンプには興味があり、色々記事などを読
んで2A3の力強い音にあこがれていたのを思い出し、これに決定しました。
早速注文し、丁度クリスマスの時期に届きました。キットに入っている部品をチェッ
クし、回路図とにらめっこしながら、実装イメージとチューニング案を練ります。
チューニングは、信号がダイレクトに通る部品を高品質なものに交換すること、
出力管の寿命を延ばすため、バイアスを深めに掛ける事、入力切替など不要な回
路を割愛する、などです。
そのために、年末で人がごったがえしている秋葉原を歩きまわります。昔と随分
変わりました。以前は部品を扱う店が沢山あったのですが、最近はアニメ系とPC
系の店ばかりです。
しかしいくつか老舗が残っていたので、そこでなんとか入手しました。
さて組み立てです。キットなので非常に簡単ですが、高圧を扱うのと、ノイズを
拾わないよう気をつかって実装します。これは培ってきたノウハウが活用できそ
うです。
結局、2日間、延べ7時間くらいで音出しまでこぎつけました。
まずは電源部単独で動かし、正常に電圧が掛かるのを確認。次は球を差し、ボリュー
ムを絞り、アンプ単体で電源を入れてみる。カチッっとソフトスタート用のリレー
が動き、真空管のヒーターが徐々に赤くなってきます。ここで異常な発熱・音・
匂いがしないか確認し、プレート・グリッド・カソードの電圧を確認しておきま
す、問題なさそうなので、いったん電源を切り、CDプレーヤとスピーカーを繋ぎ
ます。
緊張の一瞬。電源を入れ、CDを再生します。しばらく待った後、ボリュームを徐
々に時計回りに回すと…
聞きなれた音楽がスピーカーから流れてきました。一発動作とはうれしいもので
す。音は…何故か右だけ音量が小さい。各部の電圧を測定しても、回路図どおり。
しばらく原因がつかめずにいましたが、ふと出力管を左右逆に入れ替えてみたと
ころ、左が小さくなりました。どうやら真空管の不良だったようです…
キットについていた真空管は、昔のものではなく中国で再生産されたものです。
残念ながら品質管理が徹底していなかったのかもしれません。
気を取り直して、評判の良いらしいロシア製の出力管を今日買ってきて、交換し
ました。こんどは完璧。今エージングのために音楽を鳴らしつづけています。
常用しているアンプに比べ、迫力のある低音は出ませんが、聞いていて疲れない
音です。ちょっと弦楽器で歪む感じがある曲もありましたが、エージングが進ん
だのか、気にならなくなってきました。
なんというか、とても好みの音に近いんです。
超ハイファイでないほうが、私の好みなのかもしれません。以前は、金田式に古
いスピーカーを組み合わせたりして、バランスを取っていたとも思えてきます。
なんとなく、写真に通じるものがありそうです。
スペック的に優れた現代レンズは、綺麗に写るが何か面白みがない。それよりは、
ディスタゴン35/1.4やトプコール58/1.4、プラナー80/2.8のように、若干収差が
残っているほうが好みであることと、近いものがあるのではと感じました。
長くなってしまいましたが、今回のアンプ作製を通じ、なんとなく自分の好み
がわかり、写真とオーディオ、通じるものがあるのではないかと感じることがで
きました。
それでは。
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^ ^ Tomosuke Takanashi / Thommo
. . E-mail : thommo@bf.mbn.or.jp
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