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[nikomat:05506] Re: hyouten'ka no keiken (F)
榎@物質研%元東北大工学部金属系助手です。
At 13:24 97/08/08 +0900, Hiroshi SATO wrote:
> 佐藤(ひ)@ほとんどROMの鉄チャン です。
>
> > 榎@物質研です。
> >
> > > その冬一番の冷え込みといわれた塩狩峠で明け方−25度迄の
> > > 冷え込みの中SLの撮影中の話しです。
> >
> > こちらは、実体験ではなく伝聞なのですが、厳寒期の狩勝峠なんかですと
> > 三脚も保たないそうですね。GitzoだろうがHuskyだろうが、5〜6本のうち
> > 1本は必ず折れてしまったそうです。
>
> これは寒さを誇張したいが為の冗談ですよね?
>
> いくら厳寒期とはいえ寒さで金属がもろくなるということはないと思いますよ。
> -40℃の世界で薔薇の花がこなごなに砕け散るのも、バナナで釘が打てるのも
> (いくら凝固点降下があるとは言え)
> 水分が凍ってしまうことで弾力を失うためであって、
> もともと固体である金属が寒さのためにもろくなるということは無いですよ。
いえいえ、金属には「低温脆性」という性質がありまして、低温になると延性破壊
するよりも脆性破壊しやすくなります。延性破壊というのは、変形しながら破壊す
る形態で、変形を起こすだけの余分な力が必要です。それに対して脆性破壊という
のは、レンガが割れるようにポッキリ折れるような破壊形態で、延性破壊よりもは
るかに小さな力で割れてしまいます。
材料にもよりますが、焼入れ鋼なんか-20℃ぐらいまで冷却すると、極めて衝撃的な
力に弱くなってポッキリ折れてしまいます。
でも、三脚に使われている材料がどのくらいで低温脆性を示すかは知りません(^_^;)。
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榎 浩 利 通産省工業技術院物質工学工業技術研究所
Hirotoshi Enoki E-mail : enoki@nimc.go.jp
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