[Date Prev][Date Next][Thread Prev][Thread Next][Date Index][Thread Index]

[nikomat:11359] [OTF 4-2]



[OTF4-2]

 <始めに>
前回は定義1でした。今回は定義2です。
定義2は、点像を測定して、それをフーリエ変換します。
定義3は、瞳関数の自己相関です。(これは初のお目見え)

#  が頭に着いているところはちょっと高級なお話です。
   でも、一度は読んでみよう。

<定義と測定法>
「各定義のつながりは次回にしますかね。(きっと先回りしないでは
いられない方が多いと思いますが)」と書いたので、つながりをまず
書きます。(ちょっと高度です)

まず、OTFは複素数で、MTF=|OTF|、PTF=arg(OTF)
の関係ですから、OTF=MTF・exp(iPTF)です。

点像分布関数は強度分布で、PSF(Point Spread Function)はゼロ
以上の実数です。

次にレンズには瞳関数と呼ばれる量があります。これはうんと簡単に
絞りの位置に収差を圧縮して持ってきたと思ってください。これは
波面収差で定義され、複素数になりますが、無収差では1(つまり
透過率1で光の波の位相はすべてゼロです。(波面収差デスので、
以前、こやのさんが質問した光の位相になります)ところが収差が
あると、大抵は絶対値が1で位相が分布します。
この瞳関数は物点と倍率、あるいは物点と像面などが決まれば、ひとつ
決まります。

#レンズの作用として、点から出た発散球面波を像点に集まる収束
球面波に変換する素子と書きましたが、まさにレンズの真ん中では
球面波から球面波になる中間で平面波になりその形状が瞳関数だと
思ってください。
ああ、長かったが、瞳関数をPFとします。

その1。瞳関数(複素)のフーリエ変換の強度(絶対値の2乗)が
    点像分布関数。  PSF=|F(PF)|^2
                =F(PF)・F(PF)*
    ここに、F()はフーリエ変換、*は複素共役です。
    (多少、懐かしいでしょう?)
その2。点像分布関数(実数)のフーリエ変換がOTF。
        OTF=F(PSF)
その3。1と2より、瞳関数の自己相関がOTF。自己相関を光学では
    ☆と書きます(本当!)よって、
        OTF=PF☆PF   です。

ここまでわかるとすごい!  今日から普通の人を越え、いけてる人に
なりました。

<定義2の測定法>
この原理で作ったのがNOAです。

点像分布関数はもともと2次元分布で、もちろん2次元で測定し、
2次元のフーリエ変換をすれば、2次元のOTFがもとまります。
しかし、前回にも書いたように、ラジアルとタンジェンシャルの2方向が
大切なのと、2次元の分布を測定するのは大変(スキャンに時間が掛かる、
光量が足りない)なので、スリット物体をスリットスキャンします。

そうして求められた線像分布関数(LSF:Line Spread Function)を
フーリエ変換してOTFを求めます。

NOAでは像側に2μm幅のスキャンスリットを用いています。これより、
測定可能な最大空間周波数は1/0.002=500本/mmまでです。
(安全のため250本/mmまでしか表示はしていない)
物体側のスリットは可変で、コリメータと被検レンズの倍率から、像面で
2μmになるように設定しています。
#なぜ、500本/mmかというと、スキャンで得られるLSFは、本当は
   LSFdata = Slit(obj)*LSF(lens)*Slit(scan)
になっています。ここで、*はコンボリューションです。
コンボリューションなので、
   OTFdata = F(LSFdata)
                       = F(Slit(obj)*LSF(lens)*Slit(scan))
                       = F(Slit(obj))・F(LSF(lens))・F(Slit(scan))
                       = F(LSF(lens))・F(Slit)^2
                       = OTF・F(Slit)^2
となります。  OTF測定値にはスリット像のフーリエ変換の2乗(物体と
像を同じ幅に設定しているから)が掛かっています。
所で、スリットは2μmの内側1の透過率、外側0の透過率です。コレの
フーリエ変換はsinc関数とよばれる、sinc(x)=sin(x)/x で第1ゼロ点が、
ちょうど空間周波数で換算すると、500本/mmになり、この点は
補正不可能です。(ゼロが掛け算されているので、補正とはゼロで割ること!)

いやあ、長くなっちまいました。

まとめ、<定義2>は線像分布関数を測定して、それをフーリエ変換すれば
OTFがもとめられる。
_____________________________________
    馬込 伸貴 ∈ (株)ニコン 精機・開発推進室(大井です)
             magome@nikongw.nikon.co.jp ,  IFOS = nba3194
                          phone 03-3773-1892, fax.03-3775-9042