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[nikomat:25786] Re:Camera rotation
小城@3台はやはり嬉しい です。
まごめさん:
夕べは『家庭教師』を読みながらお勉強しました。
スゴいマンガだと思います、アレは。
巻末の奥付に『仙台版』なる謎の記述があったのが更に興味をそそられ
ましたが、これ以上書くと忘年会ご参加の皆様の楽しみを奪ってしまう
ことにもなりかねないので、これくらいにしておきます。
この本は必見ですぞ!!>忘年会にご参加の皆様
>できましたら、RGBの話しの再現をしてくださいませ。
>聞けない距離でしたので。
F1ブームというのがこの国にもありましたので、80年代のF1レースの写真
については、レースに興味がない方でもご覧になったことがあるものと思
います。今プロストグランプリの監督をやっているアラン・プロストがま
だ現役バリバリの頃で、1994年に事故でこの世を去ったアイルトン・セナ
やナイジェル・マンセルなどと共に活躍していた頃のことです。1987年か
らホンダのバックアップで当時国内で無敵を誇った中嶋悟がF1に参戦し、
日本からレースカメラマンが大挙してF1レースの撮影に乗り込んだのでし
た。こいつらのお行儀の悪さは世界的に有名となり、今日のような厳しい
パスコントロールになってしまったのでした、、、
そういう話をしに来たんじゃぁなくって!
この頃からF1のテレビ中継が世界的に盛んになり、各チームのカラーリン
グもそれを意識したものに変わって行きました。中でもマクラーレン・イ
ンターナショナル(ロン・デニスが買収した後の)のマールボロ・カラー
やスクーデリア・フェラーリの赤は、蛍光塗料を使用したものになったた
め、日本のカメラマン達は当初どアンダーの写真を量産していました。
もっともはるばるヨーロッパまで遠征して撮った写真が「使えない」では
困りますし、編集者も「カメラマンが馬鹿だから写真が皆真っ黒」とは口
が裂けても言えません。そこであれを『表現』ということにして紙面に掲
載することにしたのです。
当然に皆さんもご存じのことと思いますが、色にはそれぞれ固有の反射率
があり、カメラの露出計は18%のグレーを標準に露出を決定することにな
っているのですが、他の色はどんな反射率になるか?については、写真学
校や美術系の学校に通ったことのある人なら『色彩』の時間で習っており
ますし、また仕事上の経験ベースで覚えて行くものですので、そう大きく
外すことはありません。ところがマクラーレンとフェラーリの『赤』は、
蛍光色である上に順光逆光晴天曇天全ての状況で反射率が変わる!という
困ったシロモノだったのです。(オマケにこの2チームの人気が高く、写
真のニーズも高かったために撮らないわけにはいかないし)ケンウッドが
マクラーレンのテクニカルスポンサーとなり、駅貼りのポスターを作った
際には印刷屋さん(ひょっとしたら島村さんの所?)は相当苦労したとい
う話が業界中を駆け巡ったものでした。
このような状況から、F1という世界最速のレースを撮る現場で、写真を撮
る側はもっとも原始的な手間『露出』に悩まされ続けていたのでした。
余談になりますがツインリンクもてぎがオープンし初めてのレースの際、
あるカメラマンが「ど〜してここのガードレールは白くないんだぁ!」と
怒っていました。何でも彼の場合、「ガードレースの白でオレは露出の基
準を取っているのに、ココのガードレールは色を塗っていないじゃないか」
だそうで(実際は亜鉛メッキ)カメラマン個々に露出のノウハウを持って
対処しているがゆえの笑い話ですが、当事者にとっては結構真剣な悩みで
あったようです。
レースの最中にまさかブラケティングして写真を撮るわけにもいきません
し、また普通の反射率のクルマもあるわけですし、レースカメラマンにと
っては『露出』は『悩みのタネ』であったのです。(もっとも私自身はレ
ースの写真を仕事で撮り始めたのは96年からでしたので、ここら辺のお話
は諸先輩の昔話の伝聞なんですけど、、、)
この辺りの問題を全て解決してくれた?のが、ニコンのマルチパターン測
光であり、RGB測光です。各々のカメラのアルゴリズムが蛍光色をどう判断
しているか?については私もよくわからない部分があるのですが、それに
しても「良く当たり」ます。今年国内のレースでは、日本ペイントがスポ
ンサードしたクルマ(マジョーラ・インパル)が「光線状態によって色と
反射が変わる」という、まるでカメラマンを泣かせるのが目的?!のよう
なクルマもあったのですが、F5のRGB測光は見事な露出でこのクルマを切
り取っていました。F4を使っていた諸先輩方がF5にさっさと乗り換えたの
は、AF性能の向上以外にRGB測光の威力にひかれたというのもあったよう
です。(現在ニコン派のレースカメラマンの殆どはF5を使っていることで
もそれは証明されているでしょう。)私も撮り始めた頃は単体露出計を持
参したりしていた時期もあったのですが、あくまで参考にしかならないこ
とと、『理想の露出』を取ることは現状ではまず無理なわけですから、そ
の部分は『カメラの仕事』と割り切って、良い写真を撮ることに専念して
います。
ちなみに『理想の露出』とは
1.被写体の直近で受光状態が全く同じになるように露出計で光量を測定し
2.被写体の反射率を正確に計算して
3.フィルムの再現特性を考慮しながら自分の意図する露出値を決定する
ことだと私は考えています。
(レース中は無理だってわかりますよね?>ALL)
自分自身が物撮り出身ですので『露出』に対するこだわりはあるのですが、
昨今のカメラ内蔵露出計の精度の素晴らしさにはただただ感服するばかり
であります。このような素晴らしいデパイスを武器に、今後もより良い写
真を撮って行きたいと考える昨今であります。
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小城 崇史(Takafumi Kojoh)
E-Mail:tk-tyo@ca2.so-net.ne.jp
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