[Date Prev][Date Next][Thread Prev][Thread Next][Date Index][Thread Index]
[nikomat 1286] Re:Bessa-L
よしだ っす。
整理しましょう!
論点:同じスクリューマウントで、なぜライカは カチっと来るのか?
背景:
(1) 加工技術から
(1.1) マウント面とネジの軸の直交を保つ加工は 簡単なはず。
(1.2) ネジ山形状の均一性や、ネジピッチの均一性は 旋盤を使い、
工具寿命管理をケチらない限り 大差でないはず。
(2) 締結のメカニズムから
(2.1) ネジによる締結(2つ以上の部品の固定)は、理想的
には「ネジの軸方向の、ネジの応力&被締結部の応力」
による 不静定問題(つまり 両方の弾性変形のバランス
による)に帰着する。
(2.2) ネジ山部には 必ずクリアランスがあるため、締結前には
すねての方向にガタ(程度の差はある)を有する。
(2.3) 緩まないのは、座面に生じる残留トルクのせいである。
(3) 一般的に、(1)&(2)からの 理想的締結のために、特に注意すること。
(3.1) ネジ締結部のコンプライアンス(合成バネ定数の逆数)は
高い方が良い。
(3.2) ネジ部は 滑りやすい方が良い。
(締め付けの回転力が 全て 座面だけに 残るようにするため)
(3.3) 座面が 綺麗(平面性&表面処理)で あることが、理想的
締結にとって 最も 重要(クリティカル)なことである。
ここまでが、一般的な締結(弾性域締結)に共通する話です。
# 大きな力&しょっちゅう緩めたりしない 場合には、塑性域締結を
# やります。塑性域締結のほうが 特殊になっていきます。
# しかし、やはり 基本は 弾性域締結です。
# 応力の大小は、締結メカニズムには関係なく(同じっつうことです)、
# 応力が 弾性域か塑性域か(橋梁や 車のエンジンとかに使う場合とか)は
# 結構 違います。
んで、この 一般的な造りを 真面目にやれば、やっぱり カチッと
くるはずなんです。
カチッと来ない方が 手抜き です。
で、手抜きされている部分を考えますに、(1.1)や(1.2)は 手抜き以前の
問題なので 論外だ! と 言っているのです。
CZJのM42レンズは マウント部が 柔らかいアルミなので、(3.1)
を 満たしてません。
ロシア製 L39も そうです。
やはり、マウント部は 真鍮とかの 弾性係数の低い(つまり 脆い)材料を
使うべきです。
<補足説明>
さて、議論になった、締結部ですが、要は、(3.2)と(3.3)で どっちが
どの程度 支配的か? っつう 問題に似てます。
んで、ネジ山の面って スパイラル状なので、3次元(3次ではない)の自由
局面なんです。加工のときは 山型の刃を、スパイラルに直行ではなく、円筒
の 回転軸に直行して 削ります。
従って、厳密には、ネジは 面接触でなく、スパイラル状の線接触なんです。
この接触線の半径が「ネジの有功径」です。
しかも 殆どが 最初の3山、しかも その多くは さいしょの1山です。
これじゃぁ やはり 位置保持の剛性が弱すぎるんです。
ところが、座面のほうは ネジの有功径以上の径の部分で しかも面接触です。
ということで、剛性も保てますし、接触面積的にも 大きな差が出ます。
ということで、一般論として、手を抜いてはいけない処を ちゃんとしている
ライカのレンズは、やはり 理想的 ネジ締結体 と 同じ 感触を示すし、
手を抜いた レンズは やはり そういう感触だなぁ。。。 っつうだけです。
# つまり、スルスルスルーーーー、カチッ、ですわ。
だから、(意味のある 明確な差は)表面処理 と 材質 でしょう? と
言ったのでした。
<蛇足>
つまり、ネジを知っている人にとっては、カチッとくるライカのほうが
当たり前で、CZJやペンタックスの感触の方が「手抜きだけど、まぁ こんな
処には 金かけたくないのだろうなぁ」という感じで 驚きます。
# だから、カチッとくるのに 驚いている人を見るのも 不思議だった。
# タイヤ屋のバイトをしているときも、カチっと来ないと、座面が汚れて
# いるが、ネジ山が潰れているか、座面タイプがホイルの座面と違うネジ
# を使っているか、ネジが錆びているときで、そういう場合は、ちゃんと
# 「新品ネジへの交換を薦める」ように 言われていた。
-----
吉田幸司 (株)ニコン zip.140-8601 <yd@nikongw.nikon.co.jp>
精機事業本部 半露3-10G | 技術開発本部 技開2-2G
voice: 03-3773-2846 | 03-3773-1111 (ex.2772)
fax : 03-3775-9042 | 03-3773-1167