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[nikomat 1533] Re: Screw Thread (2)



よしだ っす。

結局 金曜夕方〜今(月曜 22:30)までメールにアクセスできず
150通も溜めてしまったので、順を追って説明します。

# 後のメールは まだ 読んでません。このメールの返事から です。
# 最初に 違いがあるのに 気付かないで 話が進と混乱しますので、
# まず このメールからね。> 兄じゃ

In message <199901290810.RAA17284@ml.asahi-net.or.jp>
  at Fri, 29 Jan 1999 17:06:45 +0900
  "[nikomat 1407] Re: Screw Thread (2) " 
  HIURA Shinsaku <shinsaku@vision.kuee.kyoto-u.ac.jp> wrote : 
 > ひうら@きょうだいです。
 > 
 > 前半の件は、OK です。

うん。
私、ここまでは 周知として 最初の話をしちゃったからなぁ (^^;;

 > で、最大の争点、
 > 
 > >  > たとえば、先ほどのマウントの例で言えば、「カッチリ行く
 > >  > マウント」と、「そうでないマウント」で、
 > >  >   ネジのガタによって、マウント同士は面接触しているが、
 > >  >   まだ締結は始まっていない。
 > >  > という段階で、両者を押し付けて、スリスリとまわすと、
 > >  > それほど大きな力の差は感じられるのでしょうか?
 > > 
 > > 平面であり、鏡面に近ければ 感じます。
 > > 
 > > ということで、まず最初は ここの認識に 違いが有るのです。
 > 
 > そうですね。
 > 
 > 繰り返すようになりますが、M42 ではそれなりに抗力を感じて
 > からも、結構回ります。それに対して、ライカや、良いネジ
 > では、本当に急に、くっ。と止まります。
 > 
 > で、これが、表面仕上げの差だけと仮定すると、M42 で、抗力が発生
 > するほんとうの序盤の時の程度の圧力で、もはや、その停止力
 > (レンズがそれ以上回転できない程度の摩擦力)が
 > 働いているということでしょうか。

「それ*だけ*だ」と言っているのでなく、「その効果が最も*支配的*で
しょう」と 言ったのです。

考えなきゃならないのは2点です。
(1) 材質が同じなので、仕上げが粗くても ファンデルワールス力 っぽい
    効果(正確には「2つのマウント面が同じ材質であることによっても
    たらされる 金属結合っぽい効果」で、これは いげたくん から
    「それは カシミール効果と呼ぶらしい」と 指摘がありましたよね。)
    による摩擦も(接触した瞬間から)出る。
(2) まして 鏡面に近いので (1)の効果は かなり大きいはず。

 > もしくは、本来なめらかな面であれば、それほど強い程度の停止力が
 > 発生するはずの位置(引きずりが発生し出すあたり)から、
 > M42 ではさらにかなり回ってしまったりしますが、それだけ
 > 回るようなコンプライアンスは、どこにあるのでしょう?

これは 座面にも ネジ山のほうにもあるけど、ネジ山のほうに
依存するほうが大きいでしょうね。

 > もう既にこの位置では、クリアランスは0になっているはずですよね。

そうですね。それに剛性だって 座面のほうが高いだろうし。
だから どう考えても ネジ山部のほうですね。

# ネジ山部のほうに比べ 座面に 酷く柔らかい材料を使ってさえ
# いなければね。勿論 今は そういう前提ですよね?

 > > # んで、2番目の違いは、フンデルワールス力が無い場合に
 > > # 座面(マウント面)での ストップが 支配的(yd)か、
 > > # ネジ面での ストップが支配的(兄じゃ)か? という点だ
 > > # と思うのですが、そういう認識で良いでしょうか?
 > 
 > いやいや、ネジ面でストップするなんて言ってません。全く。

あ、そうなの。最初は そう言っているように感じました。
そうじゃないなら、この点については OKです。

ただ、それにしても、兄じゃの言い分を 私の言っていることに めい
いっぱい近づけて言い直しても、
「座面 と ネジ面(正確には有効径の螺旋状態の線。ネジ山に掛かる
圧力により、多少は面接触になっている可能性もある)が ほぼ同時に
接することで 力をサチらせる」と 言っているのでしょう?

# 違うのかな?

 > ネジや、ネジと座面の位置関係が高精度だと、クリアランスが
 > 取れた瞬間から、(そこからは変形ですが、変形する領域が
 > 大きいことによって、)回転角に対する圧縮力が素早く
 > 立ち上がります。つまり、バネ定数が高いわけですね。

ですね。

# んで、理想的なネジは この状態です。
# この理想的ネジで 緩み試験するため、超々精密ネジを作ったり
# して 実験をしてた。ネジ面研磨やネジ面転造とかね。

 > で、圧縮力が立ち上がると、「座面が」摩擦力を発生するので
 > ネジが止まった感触を覚える。という論理です。
 > 
 > 最初のメールからこの論点は一貫しています。

これが「ネジの締結のメカニズム」そのものです。

 > 重複しますが、そのまま引用します。
 > どこがおかしいか教えてください。

了解。

 > (以下のグラフの「位置ずれ」というのは、ネジの軸方向の移動と
 >   思ってください。つまり、回転に応じて、軸方向の基準位置は
 >   移動するので、以下のグラフで、回転させると水平線が上下に
 >   移動する。で、その水平線と、グラフの交点の x 座標が応力
 >   (座面の押し付け力)を決めるんですが、これが、高精度だと、
 >   さっと強くなるので、止まる。という論理です)
 > 
 > === [1229] ========================
 > ガタがあっても、精度が高い(それによって、ネジのどこかの一点に
 > 応力が集中することがない。よって弾性変形の量が小さい)と、
 > 
 >                 位置ずれ
 >                    ^
 >                    |  ************  
 >                    |**
 >                    *
 >                    *
 >                    *
 >  ------------------*-------------------------> 応力
 >                    *
 >                    *
 >                    *
 >                  **|
 >      ************  |
 >                    |

まず この文章が間違え。
「等ピッチのネジ」の場合、ネジのどこかの1点(または その近傍)
に 応力集中します。だから、「必ず1山目で 破壊する」のです。

# と書いたから、「それは 大きな力だからでしょう?」と言われた
# のだろうね。

必ず1山目に応力集中する理由は、「応力による歪み」のせいです。
つまり その歪みが 塑性変形だろうと 弾性変形だろうと 応力集中
する事や 応力集中する場所には 依存しません。

私が、ネジ締結をバネモデルで示す程度には理解している(つまり、
部品要素としての不静定問題として認識している)兄じゃに対して、
それでも なお「不静定問題」と言ったのは、この部分を見落として
いるからです。

 > って感じでしょう。で、逆にガタはないけど、精度が低いとか、
 > 材料の剛性が低い場合

材料の剛性が低い場合は 当然、、、

 > 
 >                 位置ずれ
 >                    ^
 >                    |        ************  
 >                    |    ****
 >                    |  **
 >                    | *
 >                    |*
 >  ------------------*-------------------------> 応力
 >                   *|
 >                  * |
 >                **  |
 >            ****    |
 >   *********        |
 >                    |
 > 
 > って感じでしょう。

ですが、ネジの精度のほうは、事故ネジや 結構酷い加工をしないと
顕著には 出ない程度だと思います。

 > で、ネジを締め付けていくと、マウント面同士の擦り合わせによって
 > 軸方向の応力が発生しますが、これは締め付けトルクによって
 > 決まってきます。(静摩擦は無視。)

そうです。

 > で、前者の場合、応力によらず停止する位置は一定(逆に言えば、
 > 停まったところから、さらに力を増やしても、回らない。カチッと
 > 止まる)ということになると思いますが、後者の場合、締め付けて
 > いくと、その回転角に応じて応力が増大していくので、じわじわ
 > 強くなっていく感じになると思います。
 > 
 > # つまり、「ガタの有無」と、「精度、剛性」は本質的には
 > # あるていど独立なのでは、と。
 > 
 > ネジ山のプロファイルも重要でしょうが、ネジ切りがマウント面に
 > 対して傾いていたり、綺麗に切れてなかったらダメでしょうね。
 > 
 > つまり、ぶつかり合うネジ山同士が、それぞれ小さなバネと
 > 考えると、加工精度が高いと
 > 
 >   |-CCCCCCC-| |
 >   |           |
 >   |-CCCCCCC-| |
 >   |           |
 >   |-CCCCCCC-| |
 > ==|           |==
 >   |-CCCCCCC-| |
 >   |           |
 >   |-CCCCCCC-| |
 >   |           |
 >   |-CCCCCCC-| |
 > 
 > の、両方の == を押したり引いたりしたときの状態になります。
 > 接触した瞬間、パッとバネの応力が立ち上がる。

この図の 不味い処は、「ネジ山がバネ」で「ネジ山の大地」が剛体
だからです。このモデルは 間違えてます。

前にも書いたけど、、、
台形ネジ(締結ネジは 通常 台形ネジです。送りネジだと 色々あります)
の場合、その斜面はおよそ60度、しかも 雄ネジも雌ネジも。したがって、
圧力は法線方向に働きます。したがって、ネジ山が変形する頃には大地の
部分も変形してます。しかも この変形は 山の変形を無視できないなら、
同様に無視できません。それは、山に掛かる応力が 山の麓に逃げる断面
形状を持っているからです。

# したがって、上記バネモデルは、*縦線の部分もバネ* なんです。

ついでなので、もっと詳しく書きましょう。
雌ネジの場合、大地は 外へ どんどん広がります。従って、大地部分
では 応力は拡散します。結果的に ネジ山の部分に応力集中します。
だから、雌ねじ の破壊が起こるときは「ネジ山が崩れる」様式になる。
雄ネジの場合、局所的に程度の差こそあれ、全山に応力が働くし、その
応力を受ける大地は丸棒型である。しかも この丸棒は、ネジ締結のため
引っ張られても いる。したがって、破壊するときは、切り込みを入れた
丸棒のように 第一周目のネジの谷部から破綻する。

# つまり、ネジの麓よりも 棒の部分のほうが 応力集中しやすい。
# だから、同じ材質なら、雌ネジの山の破壊よりも 雄ネジが ポッキリ
# 逝くことになる。雌ネジの麓のほうが 雄ネジの麓よりも 大きな面積
# なので、当たり前ですけど。(^^;;

雄 雌 とも 同じ剛性の材質なら、軸方向には、断面積の小さい 雄ネジ
のほうが より伸びます。そして、この伸びがあるせいで、
「座面から数えて、n周目の山のほうが、n+1周目の山よりも
  大きな応力を受ける」
のです。

そして、
(1) このように作用しないほど 加工精度の低いネジは 考えられない。
    (理由:ピッチ 0.75や 1.0 のネジが こう作用しないような旋盤
            は メーカーには 無いはず。。。と考えられるくらい酷い。
            ましてピッチ0.5で 4条とかのヘリコイドを加工できる工
            場に こんな酷い旋盤が あることなど 有り得ない)
(2) まして 精度が高ければ高いほど、この現象は 当然のように起こります。

つまり、、、

 >  (  -CCCCCC- は、バネのつもり)
 > 
 > それに対して、精度が低いと
 > 
 >   |-CCCCCCC-----| |
 >   |               |
 >   |-CCCCCCC--|    |
 >   |               |
 >   |-CCCCCCC----|  |
 > ==|               |==
 >   |-CCCCCCC-|     |
 >   |               |
 >   |-CCCCCCC-----| |
 >   |               |
 >   |-CCCCCCC-|     |
 > 
 > という感じになって、徐々にバネが効いてくるので、
 > 結果として同じ材質でも見かけの剛性は下がります。

この1つ1つのバネを 1周1周でなく、隣接近傍として見れば、
ネジの精度により こうなることもあるでしょう。

しかし、その場合も、
「ネジは 雄&雌で 違う長さ(なのが一般的。だって ネジの締結
  は *不静定問題* だもの)なので、誤差0のネジなら なおさら
  第一周目の応力が一番大きく、座面から 離れるほど応力は小さい。」
です。

# 今、急に思ったのだけど、軸方向の変形以前に カチっと止まる
# という意味なの? だったら 今まで 考えてませんでした。
# だけど、その場合って、締結力は 何処の変形で起こるの???
# マウントが 撓んでいる程度では、あのLマウントの装着力には
# 大した抵抗は(人間には)感じられない位なんだけど・・・。

*****
前のメールでも書きました(読み飛ばされたか,勘違いされたのだろう)
が、全てのネジ山に掛かる力を一定にするために 不等ピッチネジという
ものが 考案されており、私が居た研究室でも 使ったことがあります。
こういうネジは、緩んでいるときに ネジ山が 噛んだような感触で 気持ち
悪いです。

通常、こういうネジは、緩み防止や、より締結力を与えるために使われ
ます。

なお、連続的に変えるのは 凄く生産コストが かかるため、この効果に
近い効果を得るためには、ナットの外に もう一周ピッチをズラしたエラ
を付け、そいつで ネジを 座面とは 逆側から引っ張ることも あります。
そういうやつだと、上記不等ピッチに似た効果を得られます。

# バイクの リヤ ディスク ブレーキの 固定リンク部に 使っていたり
# しますので、見てください。

****

以下の部分は ちょっと 脇道にそれるので、この後に議論があるなら、
その議論は 上記 議論の後にしましょう。

 > (注:このバネ定数が、どこに起因するか・・が、みつながさんとの
 >   論点だったように思います。コンプライアンスのモデルそのものは
 >   同じものを考えていると思う。光永さんは、座面の荒さが荒いほど、
 >   バネ定数が弱くなって、軸方向の移動量に対する、圧縮力の立ち
 >   上がりがゆるやかになる。と論じた。これには賛成ですが、
 >   全体としてみたら、量的にはわずかだと私は思う。)

この件については「表面が どう粗いのか(形状)」にも依存すると
思います。例えば 突っ切りバイトで 削っただけですと、かなり 同
心円に近いので、結構な剛性を期待できます。そういう場合は、兄じゃ
の推測どおり、その程度は 量的には(ネジ山部の剛性の弱さに比べ)
わずかだと 私も 思います。

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