[Date Prev][Date Next][Thread Prev][Thread Next][Date Index][Thread Index]

[nikomat 4289] Re: Lens no kihou?



ひうらっす.

>  |> レンズ内部に蓮根の穴のような板を入れるとソフトフォーカスレンズに
>  |> なるようですし、レンズの前玉の表に10円玉位の紙を置いてもボケに
>  |> しか効いてこないらしいですから、レンズって不思議ですね。

イマゴンのあれは,レンズの周辺部を通る光と,中央部を通る
光の比率を調整して,ソフトフォーカスの度合いを調整するもの
だと思います.つまり,芯を作る光束と,フレアを作る光束の
比率を変えるわけですね.「ふわっとソフト」でも,絞り板を
入れるとソフト度が下がると書いてありますが,それではボケ量
そのものが小さくなるのがいやだったのでしょう.

レンコンの穴ではなく,パンチングメタルみたいな,もっと小さな穴
(単体で,回折効果が観察される程度)をたくさん(規則的に)開けた
板を入れると,回折現象が発生して,画像が滲むような現象を発生
させることが出来るのではないかと思います.ただし,穴の開け方の
規則性にそった,非等方的なぼけになるでしょうが・・
非常に細かい穴を不規則に並べれば,ただの ND になるでしょうね.

----

絞り形状が像に及ぼす影響には2種類あります.

1. まず,幾何光学的に考えれば(つまり,光の回折を無視すれば),
収差のない理想レンズに,どのような形の絞りを入れても,
合焦像には影響を及ぼしません.しかし,非合焦像には影響があります.
点光源のぼけ像が,絞りの形にぼけます(だから,絞り羽根の枚数が
少ないと,夜景をバックのポートレートなどでは点光源が絞りの
多角形の形にぼける.)

#数学的には,元の(ぼけのない)画像に,絞りの形状を縮小した
#図形が畳み込まれている・・と言えます.
#合焦する・・ということは,この縮小率が0になっている場合を
#差します.(つまり,デルタ関数を畳み込んでいることになるので,
#被写体が忠実に再現される.)

絞りの大きさが大きいほど,ボケの大きさも大きくなるので,
これは絞りを開けているときに支配的.

2. で,次に,・・波動光学的効果を考慮すると(光の回折の影響を
考えると),絞りの形はこの回折現象に影響します.この場合,
絞りの形状の「フーリエ変換像」が畳み込まれることになります.
フーリエ変換像は,もとの図形が小さいほど広がった図形に
なりますから,これは絞ったときに支配的.
(ピーカンの時に,輝点を撮ると,星型にトゲが伸びるのは
 こちら.)

で,レンズの気泡ですが,これは口径の中の一部を隠すだけなので,
2. にはなり得ない.つまり,大きなボケの形に影響するわけです.
(だから,気泡のあるレンズで,どーんと大きいボケを作ると,
 そのなかにプツプツと気泡の影ができる可能性はあります.
しかしこれは,非常に収差の小さいレンズ+非常に小さな光源で
なければ発生しないでしょう. 

----
以上は,絞りが唯一1箇所の場合.

レンズ本体の絞りを絞っていくと,また違う効果が出てきます.
レンズの絞りを極限まで絞ると,フィルム上のある一点に集まる
光が通る光束の幅が狭くなりますから,そこに気泡が入ると暗く
なることになります.問題はその比率によりけり(レンズを外から
みて,見かけの絞りの最長直径と,気泡の直径の比率によりけり)
ということになります.レトロフォーカスの広角レンズでは,
レンズ前群の負のパワーにより,レンズの奥では一度光束の幅が
広がりますから,逆に貴方の見かけの直径は実際の直径よりも
小さく見えることになり,影響も小さくなります.
レンズの前玉付近に気泡がある場合は,20mm/F32 とかだと,
光束の径は 0.6mm ぐらいになるので,レンズ表面の気泡や
傷は問題になってくるでしょう.

#言い換えれば,レンズの絞りを絞ると,被写界深度が深くなるので
#気泡の影のボケの直径が小さくなり,フィルム全体に影響を及ぼす
#のではなく,一部に影響するようになるため.と説明できるでしょう.

>  |レンズの前に小さい障害物をおくと,点から円錐状に放射される光の
>  |一部が遮られて影を作ります.しかしそれ以外の放射光はレンズによって
>  |一点に結ばれるので,影の分明るさは減りますが,やはり像を結んで
>  |くれます.
>  |
>  |ただし障害物の大きさが大きくなり,点光源から放射されレンズにと
>  |り込まれる円錐形状を全部覆ってしまうと,当然像は結べませんから
>  |そこに黒い点が生じます.
>
> レンズから離れると、結像になり、どんどん近付くと口径のロスになり、
> さらにレンズの中に入るとボケ味に効いてくるという連続性が面白く
> ないですか?

うーん,これは,絞りが2枚ある系で,その絞りの間隔が異なるため
蹴られの発生の仕方が異なってくるから,・・ということもできますね.

絞りが1枚で,その前後で蹴られない(玉の直径はすべて十分であると
する)と,蹴られは生じないわけです.それが,互いに離れてくると,
あるときは蹴られと言われ,あるときは被写体と呼ばれる・・と.

実際には,「蹴られ」といえど,「非常に近い位置にある黒い物体が,
大きくデフォーカスして写り込んでいる」だけなのですが,・・・

絞りを絞り込む,という動作も,実際には絞りの像がデフォーカスして
像全体を覆っているにすぎない.で,そのデフォーカス部分には,
その絞りの形状の効果が表れるわけです.

ですから,

1. レンズから絞りが離れて,物点の付近に近づくと,絞りの形状は
   もはやデフォーカスせず,像としてフィルム面上に再現される.
   その絞りを通して見える向こう側の像(当然デフォーカスしている)は,
   その結像して見える絞り形状の影響を受ける(絞りによって向こうの
   像が絞りの形に遮られるということは,ボケ像の畳み込みカーネルが
   絞りの形になっていると言える!)

2. 絞りがレンズに近づくと,その絞りの像はデフォーカスしていくが,
   その絞りによって暗くなった図形の付近では,やはり点光源のボケ像
   は絞りの形になっている.

3. 絞りがレンズの内部に入り,レンズ本体による蹴られが発生しなくなると,
  絞りのデフォーカス像はもはや画面全体を覆うようになり,画面全体が
  その絞りによって蹴られ(光量低下)の影響を受ける.
   デフォーカス像のぼけカーネルの形状は,最初で述べたように,
   やはり絞りの図形と相似になる.

ということで,

○どこに絞りをおいても(たとえ被写体面であっても)この絞りは
 その向こうにある物体のボケ味に影響を持つ.
○この効果の(フィルム面上の)範囲は,絞りのデフォーカス像が
 どれだけの範囲を被っているかによって決まる.

ということが言えます.

>  |ソフトフォーカスレンズの仕組みはよく分かりません.蓮根のような
>  |物をレンズ内にいれると,その部分で回折現象がおきて,一点に結ぶ
>  |はずの光が,少しずれたところにまわり,滲みのような効果をおこす
>  |のかな,と想像してますが...
>
> 球面収差を利用したボケとは一味違うそうですから、DC Nikkorなどとは
> 違うボケなんでしょうか。ヴィンテージのポートレートなんかシルクの
> ような滲んだボケのようなのがありますが、そういうのかな。ボケには
> うといのでした。

最初に書いたとおり,穴の並べ方に沿った方向に強いトゲ(というより,
等間隔の粒粒状のボケ)を持つボケになるでしょうね.
レンズの収差と相まっておもしろい効果が得られるかも知れません.

そうそう,あと気泡は,光を完全に遮断するのではなく,あらぬ方向に
拡散させるものなので,(ほとんど黒い物体と考えて差し支えないと
思いますが)その拡散光がコントラストを下げるということはありえます.
といっても,これは面積比の問題なので,(よほど盛大に気泡が
ないかぎり)ほとんど影響ないと思います.

では.