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[nikomat 9477] Re:Fuji Superia
日浦です.
> > これはラボの機械やペーパーのせいではないかと疑っています。
> > 鑑葉植物とかの葉っぱの色も、極端に派手になることがあるし。
> > なんというか、こんな蛍光色じゃないだろ、という色。一緒に写っ
> > ている肌色とかは結構自然なんですが。あれですかね、人間の記憶
> > というのが変なんで、本当は物理的にはああいう色なんですかね?
フィルムと目との分光感度が違ったりしますからね.
それに各感色層の間でいろいろ反応させて,彩度を
調整していたりするそうなので.
#物理的な色,というものは,実際には存在しないですからね.
#存在するのは,連続的な「分光反射特性」だけであって,それを
#三色におおざっぱに分類して感じ,その割合を「色」と人間が
#認識しているだけですから.光源の種類によって別の物体が
#場合によっては同じ色に見え,別の場合は違った色に見えたり
#してしまうわけです.
> 人間の色の認識が如何にいい加減かを調べる実験。
>
> 灰色の紙を用意する。18%標準反射板が使えればなお良い。
> 紙の大きさは、A4以上が良い。望ましくは、A3程度。
> 中央部に1cm程度の穴を開ける。
> 紙を持って腕を一杯に伸ばして穴を覗くと、視野は1°程度になる。
> この穴から、青空や葉っぱ、人間の皮膚などを覗いてみる。
> (穴の中はベタ1色に見えるように注意。)
> 穴から見える色をマンセル色表や色紙と比較し、近似色を見つける。
> 次に、紙を視野から取り去って先程の近似色と比較する。
おもしろそうですね.
このように,対象と手元の光源がほぼ同じで,常に色標と物体を隣に
配置して比べればそう差は出なさそうに思えますが,やはり知識や
思いこみに引きずられるところはあるでしょうから.
あらかじめ肌色と思っている色をマンセルチップの中から
選んでおくとか,手元の光源を変えるとかすれば,
より大きく変わってくる可能性はあるでしょうね.
色恒常性(人間のオートホワイトバランス機能)も影響してくる
と思われるので.
こういう風に,心理学的に行われた実験例は実はあまり知らない
のですが,興味があるところです.前の京大の研究室はマンセル
ブック(1cm *1cm 程度の色標をひたすら納めた,厚さ10cm超の
本2冊組)も数セットあったので実験できたのですが.
工学的に,まじめに色の恒常性を研究している人もいろいろ
おられます.ま僕が知っているのはパターン認識の分野なので,
認識技術の一つとしてやられているものが多いですが.
もちろんオートプリンターとか,デジカメをやっているところは
どこも研究していると思います.
#例えば,ダイナミックレンジの大きいカメラ(冷却CCDなど)で
#撮影したデータを元に,ハイライト(鏡面反射の部分であることが
#多い・・つまり光源色に近い)を使ってホワイトバランスを取ると
#かなりいい調整が行えます.人間がこうやっているのかどうかは
#不明なのですが.
##Nikon D1 などは,F5と同じような低解像度のCCDでバランスを
##取るようですが,これだとダイナミックレンジが大きく取れる
##ので,本体のCCDでホワイトバランスを取るよりかなり有利に
##なるんでしょうね.
そういえば昔,フルカラーディスプレイが一般に普及してきた頃,
それに表示したレイトレーシングの絵を見て,「へぇ,銀色も表示
できるんだ.」って言った人もいましたが・・・・これもいわば,
人間の色認識(質感認識)のトリックともいえますね.
> さて、人間の皮膚はどんな色に見えるでしょうか?
> この色がそのまま写真に再現されたら、どうでしょう?
> この色を記憶色の肌色に補正してプリントした場合、葉っぱの色は
> どうなるでしょうか?
うーん,
物理的に忠実な色が出せる(つまり分光感度特性が目とほぼ同じ)
フィルムと,忠実な色再現のペーパーの出力結果(ペーパーの分光
反射特性と観察時の光源のスペクトルの問題はこの際無視)が,
記憶色と異なるから,肌色を記憶色に近づけるようにプリンタの
色補正で補正を掛ける.その結果,葉っぱの色がずれる.
というような現象が問題なのではないような気がします.
どちらかというと,最近のネガフィルムは色毎にチューニング(特に
肌色)して,(例えば肌色を感じる層の化学変化が,他の層に伝搬して
ピンク色に近づけるとか)されているのはないかという気もします.
その一つとして妙に緑を明るく描写するとか言うのがあるのかも.
蛍光,という表現が出ていますが,人間は実際にはほんとうに
蛍光現象が起こっているかどうかを判断することはできないです.
ですが,物理的には,単なる反射現象は,どのスペクトルに
おいても入射エネルギーより反射エネルギーのほうが小さくなる.
というのに対し,蛍光は,あるスペクトルのエネルギーを別の
スペクトル帯での発光エネルギーに変換する現象なので,
場合によっては3刺激値(RGBのどれかの感覚量)のどれかの値
について,反射光の強度が100%反射の場合より強く感じる場合が
あるわけです.
おそらく,これをもって「蛍光している」と感じると考えられるわけで
あり,言い換えれば,「蛍光色」というような色は物理的には存在しない
という意味で,「銀色」が存在しないというのと同じようなことに
なるわけですね.いや,蛍光色,と言う表現や感覚が悪いというわけ
ではなくて,厳密には「色」そのものでなく「物理現象」に関する
言葉という意味です.
で,単にプリンタの光源の色バランスをいじって色を補正した場合,
(たとえば緑をより明るく出した場合)他の色の領域でも同様に緑色成分
がより強くなるはずです.つまり全体が緑にコケるわけで,見た目には
光源が緑に寄っている場合の忠実なプリントに近づくはずです.という
ことで,どう補正しても,ある意味で自然というか,「蛍光」の感覚は
与えないはずです.
それに対し,「蛍光している」ように感じると言うことは,その色の
領域だけ特に周囲より明るく見えている場合だと考えられます.
(例えば,写真を暗く焼いて,しかし緑のところだけ特に元の明るさ
のものにしたら,その緑のところは光っているとか,蛍光しているように
見えるでしょう.)だから,おっしゃるような不思議な感覚があるという
ことは,ノンリニアな変化が起こっている,つまり特定の色について
より明るく見せるような化学反応が進行している場合であると
推定するほうが自然と思われます.
あともうひとつあり得るのは,最初で書いたように分光感度特性の
問題ですね.例えば,(実際はそんなことはないですが)その葉っぱ
から出ているスペクトルは妙な形をしていて,人間の緑に感じる特性
では暗く見えるが,じつは葉っぱの分光反射特性のピークと,フィルムの
分光感度特性のピークがピッタリ重なっていたりすると,人間に比べて
特にその緑が明るく写ることになります.これも蛍光感覚を生じる
原因になり得ます.
ま川口さんはよくご存じのうえで,人間の色感覚のいいかげんさに
ついて特にご指摘だったのだと思いますけれど,
私の思いつきのほうもご興味があればということで.
では
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日浦 慎作 Shinsaku HIURA
大阪大学大学院 基礎工学研究科
システム人間系専攻 システム科学分野
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