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[nikomat 22381] Re: slump help
乾です.
前から気になっていたメイルなんで,ちょっとだけリプライ.
#非常に共感を持ったので.
At 20:55 01/07/16 +0900, you wrote:
>日浦です.
>
>科学者は,基本的には単なる観察者かもしれませんが,しかし
>観察しているだけで何かがわかるわけではないと思います.
>その人なりの,独自の着眼点・切り口があって,それにより,昔から
>ずっと目の前に横たわっていた普遍的な事柄が初めて明らかに
>なるわけです.
ですね.真実は「そこにある」わけですが,しかしそれを見つけ出す,
または,適切に解釈し表現するところに,科学の面白さがあるのだと
思います.
>私の分野は工学系ですから,自然界からの発見というものは少なく,
>ちょっとした数式から導出したつまらない原理のようなものが主体
>ですが,それを外部に表現するために,多大なる労力をかけるわけです.
>例えば,実証システムを作ったりするわけですが,その目的というのは,
>やはりそのシステムを提供するのが目的ではなくて,自分のアイデアや
>視点・着眼点がうまく働くことを示す表現の道具でしかない場合が
>多いわけです.
ここのあたりは,「同感」と思われる方は多いのでは? 科学にせよ
技術にせよ,実は自己表現の一つの形態なのではないか,と最近
特に感じます.研究というとオリジナリティが重視されるわけですが,
これなんかも,どれだけ強い自己表現なのか,と言い換えられるよう
に思います.そしてその意味で,工学も芸術も同じ土俵に乗り得るの
ではないかと感じます.
美しい研究,美しい技術っていうのかな,これは絶対にあると思う.
それらは普遍的な価値をもつと思うし,歴史の中に埋没しない
輝きを保つのではないかと感じます.ミュンヘンのドイツ博物館
で感じた心地よさは,技術の「美」に包まれているという気分だった
ように,今思い返しています.
プロジェクトXという番組があって,かなり人気があるみたいですが,
これも話題によっては乗れたり,乗れなかったりします.単なる苦労が
報われただけの話はつまらなくて,やはり技術の美しさみたいなのを
感じる話がいいですね.
>#論文査読だって,そういうもんだ・・なんてところまで割り切れれば
>#研究者としては最高でしょうね :-)
非常に稀ですが,「いい論文」,オーラを発するような美しい論文は
確かにあります.それを査読することは,一種の喜びですね.最も
査読する論文の多くは,ごく僅かな「差分」を追求したようなのが
多くて,非常に苦痛なのですが...(自己反省)
>やりたいようにやりたいことをやって,なにもなければおとなしく
>しておく,ということで,いいんじゃないでしょうか?
>沈静化していても,またそのうち火がついたりしますしね ^^;;
最後に一つだけ愚痴なのですが...
研究の評価という議論がよくありますね.引用回数だ,とか,論文賞の
受賞だ,とか,中には研究費の獲得額だ,みたいな乱暴な議論も
あって,やれやれなのですが,実はその研究が「良い」か「悪い」
かは,研究者本人が一番よく分かっていると思います.
伊理正夫という,昔の東大の工学部長が退官されるときに書かれた文章に,
「研究者が,自分の研究の価値を自分で評価できなくったらお終いだ」
みたいな話があるのですが,まさに同感ですね.人がなんと
いおうと,いい研究は良いと信じることが大切だ,と思います.
では.