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[nikomat 25118] ニコンの世界
どうも、はざまです。
先日実家をあさっていたら1975年2月刊の「ニコンの世界」を見つけました。私
がF2を買ったとき確かおまけについてきたものです。思わず時を忘れて読み耽っ
てしまいました。
その中でカメラマン等が寄せた随想があるのですが、その中で面白いものがあっ
たのでご紹介したいと思います。
篠山紀信の随想でタイトルは「中国の木村伊兵衛先生」。木村伊兵衛が11人のカ
メラマンの団長として中国に訪問しそれに参加した篠山紀信の思い出話です。
中国人はカメラを向けるとすっと物陰に隠れてしまい、自然な表情のスナップを
撮るのは難しいが、
「ところが木村先生とみれば、空気のように撮ろうと思う対象に近づき2、3枚シ
ャッターを押し、また空気のようにスーッといなくなってしまうのだ。だから撮
られている方もまるで構えることなく、意識しないうちにもう事は終わっている。
その格好は名人芸というか、もう神業に近い。」
この中国撮影旅行は木村伊兵衛没1年前。中国国交回復すぐだと思われます。私
は1985年に中国を訪問しましたが、確かに中国人はカメラを向けるとすっといな
くなってしまい、スナップが難しいものでした。
「それにあのモータードライブの自動巻取音がなんとも中国で聞くと異様で、キ
ュンキュンと始まると他の写真家全員が僕のほうをにらんで『フィルムぐらい手
で巻けよ』とくる。(中略)そこで木村先生がぼくにあきれがおで言うのだ『シ
ノヤマさん、あんた何でそんな鉛の塊みたいなの持ってるんです。それも2台も、
そんなの早くうっちゃっちゃいなさい。第一、体に毒だ。長生きしません
よ。』」
確かにF2のモードラの音というものはけたたましいと思います。しかし当時最新
鋭の機材に対するこんな評価を「ニコンの世界」といういわば機関紙に載せちゃ
うニコンって会社も太っ腹ですね。
また木村伊兵衛はこんなことも言っていたそうです。
「(木村伊兵衛の話は)下町の人らしくしゃれていて毒がある。だから面白い。
写真機の話となると、それはもうほとんどのカメラがブリキ細工でレンズはラム
ネ玉だと悪口をつく。」
木村伊兵衛といえばライカだから、彼が評しているカメラは当然ライカ以外とい
うことになるでしょう。ニコンもライカ以外だから、うーんやっぱり太っ腹。そ
れとも「ライカ以外」の中にニコンは入っていないと思っていたのでしょうか。
さらに
「隣にいるぼくに明らかに聞こえるように『あいつは、姿を撮っている。姿を撮
っちゃあいけませんよ。姿にごまかされちゃってる……』」
深い……。
では、羽佐間