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[nikomat:11085] Re: [OTF Q&A]



ひうら@きょうだいです。

やっぱり書いてしまおう。
電気・制御の話のところだけ、

> > 歪みのあるアンプだとこうはいかないですね、きれいな sin も頭が
> > つぶれたりしますから。
> 
> > これは系の線形性があるかどうかに掛かっています。sin関数は線形微分方程式
> > の解ですから、線形系で成り立ちます。 sin波が歪むアンプはもう
> > 線形ではありま
> > せん。たとえば、電源電圧より増幅したりすると簡単に歪みます。
> 
> ちょっと電気信号の方の質問になってしまいますが、上の二つの歪みの原因は
> 入力振幅が大きすぎて出力振幅が足りない場合、もしくは入力振幅が大きすぎ
> て保護回路で切られた場合の話ですよね。定常的な入力で、それ以外の場合の
> 歪みの原因って何でしょうか?現実のアンプのゲインが入力振幅の大きさによっ
> て異なるためと考えていいですか?

電気回路で用いる抵抗、コンデンサ、コイルは、数学的にはそれぞれ線形な
働きをします(流れ込む電流に対して、両端の電圧がそれぞれ
比例、積分、微分になっています)。これを組み合わせる限りは、どんなに
複雑にしても回路は線形微分方程式で表されます。

この場合、まごめさんのおっしゃるように、ある周波数の sin 波を入れたら、

(1) その出力は(その振幅と、位相は変わりますが)おなじ周波数の sin 波が
    出ます。

(2) また、複数の sin 波を重ねて入力した場合の出力は、それぞれを別々に入力
    した場合の出力を重ね合わせたものになります。

#> i(t): 入力信号
#> A(t): ゲイン
#> o(t): 出力信号
#> 
#> o(t) = A(i(t))i(t)
#
#のような書き方をするとすれば、ある sin 波 i に対して、
#o = A・i となります。但し、A は単に実数倍するのではなく、位相の
#変化を含んだものとします。また、o, i も同様に振幅と位相の両方の
#情報を持ちます。A の値は i の周波数によって変ります。
#このことを表現するのに、電気光学分野では o, A, i に複素数を
#用います。

しかし、増幅回路の中にはトランジスタなどの能動素子があります。

簡単のために、最も簡単な非線型素子であるダイオードを考えましょう。
おおざっぱに行って、正しい方向には電気を流す素子ですが、逆方向
には流さない素子ですが、その場合、sin 波を入れたら、そのうち+
の部分だけが出力に現れます。つまり上記 (1) (2) に反します。

トランジスタも同様に+の領域でしか動作しませんから、普通は
入力にゲタをはかせて(バイアス)、+の領域内で動作させます。

> i(t): 入力信号
> A(t): ゲイン
> o(t): 出力信号
> 
> o(t) = A(i(t))i(t)

で言えば、A(i(t)) = 1   for i(t) > 0
                    0   for i(t) <= 0

という感じですね。

この他にも、例えば A(i(t)) = i(t) という場合であれば、入力の2乗が
出力に現れ、この場合も非線型となります。

上記の2例では、出力は入力の瞬時値に対応した値です。つまり、入力電圧
の周波数には依存していない歪みです。こういう場合、歪んだ出力は、
波形こそ異なれ、その周期は元の周期と同じです。
この手の歪みでは、出力には入力の sin 波の倍、3倍、4倍、・・という風な
整数倍の出力が現れ、その間の周波数の出力は出ません。
これを高調波(ハーモニックス)と呼びます。
普通のトランジスタアンプとか、クリップ波形(上記のダイオードの例や、
過大入力の例)はこの成分が大部分です。

高調波成分でないような歪みは、もっと複雑な生成要因があります。


> > 光は、線形か?  強度についてやはり弱い内は線形です。よって、レンズをとおる
> > 光が2倍になれば像の明るさ(強度)も2倍ですよね。でもどんどんやっていくとその
> > うち非線形効果がでてきて、もっとも簡単なのはレンズが溶けりゃ、もう非線形です。
> > #相反則不軌を思い浮かべた人もいることでしょう。
> > #あれは、光と感光体の非線形ですね。

これは、上記線形性の条件(2) に反する非線形性ですね。

> では、レンズの非線形性の原因は何でしょうか?上のアンプの話と同様に単色
> 光の場合、レンズの素材は受動素子として働き、融けても特性は変化するでしょ
> うが線形性は保たれるというのは間違いですか?
> とすると、レンズの素材は受動素子ではあるが、入力光の強さと出力光の強さ
> の間には元もと非線形な関係があると言うことですか?

まごめさんの講義では、光の波動は無視して、像面上の空間周波数
で議論しています。ですから、この波長とか色依存性というのは、
ちょっとおいておきましょう(この手の非線形性は蛍光現象、
光ファイバーを用いた光増幅器、ソリトン波通信で出てきます)。

例えば入力に与えた被写体のシマシマ模様がそのシマシマに写る、
こういう現象を考える上で、歪曲などがあればそれは非線型要因に
なると思います。

ここからはまごめさんにまかせて、・・