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[nikomat 23329] Re: R Leica



日浦です.

ちょっと,聞き方が意地悪だったかもしれません.すみません.

At 22:00 01/09/04 +0900, you wrote:
>>>> > 
>>>> 開放絞りで最高性能を発揮するので自然光での接写には最高なレンズだと最近 教 えら
>>>> > れました。

一般に,マクロレンズは他のレンズに較べて収差が良く取れているので,
開放でシャープな絵を得たいときに適している・・ということは
レンズの各論ではなく,「一般論として」正しいと思います.

>>そんなことはないんじゃないでしょうか.
>>マイクロニッコールの取り説に書いてありますが,
>>絞ると画質が低下するので,特に文献複写の場合などは,
>>絞らないほうが良いと書いてありますよ.
>
>「絞って」というのはもちろん、5.6とか8.0です。
>「開放ではない」という意味の「絞って」です。
>例の脇本バランスの応用?

普通,マクロレンズで小物を撮る場合,最大の障害は被写界深度です.
開放なんかで撮ったら,ある意味,特殊効果としてのボケになってしまい,
絵として成立しにくくなります(観賞サイズや画質にもよりますが).
で,絞るわけで,実際 F5.6 や F8 というのは普通ですが,
コピー用途としては,F8 まで絞るのは絞りすぎと思われます.
#但し,ちゃんとピントが合わなければ意味がないでしょうけど.

下記のS型時代の「最初の」マイクロニッコールでさえ,開放F値は F3.5
ですが,F4 で既に最高の解像度に達し,(F5.6 では同等ということですが)
F8 に絞ると明らかに画質が低下するそうです.
(まあ,F8 まで絞ると画質が低下するという現象は,中心部に関して言えば,
 大抵のレンズで言える事です.周辺部は別ですが)

また脇本バランスに関しては,(例の記事を見直して欲しいのですが)
F5.6 とか F8 というレベルの話ではなく,半段,1段というレベルの
話になっているはずです.
そういう設計にすると,開放ではちょっとコントラストが落ちるが,
開放基準設計のレンズに較べ,ちょっと絞ったときの解像度はグッと
優れたものになります.

>>(そもそも,S型時代のマイクロ 5cmF3.5 のころからそうです.
>> たけくらべの伝説がありますね)
>
>済みません、「たけくらべの伝説」は知りません。

かの有名な?小穴純教授が,先に書いた,S型用のマイクロニッコールを用いて,
樋口一葉作「たけくらべ」の文庫本(岩波)70ページを,倍率 1/13.5 で
縮写し,世人を驚かせたという話しです.

当時はマイクロフィルム作成用のレンズは F8 程度が主流だったそうです.
(もちろん判のサイズが大きいですね)

>>それに,文献複写だけが想定された使用法ではないと思います.
>>(そういうのには,出版用のアポニッコールとかのほうが
>> さらに向いてるんじゃないでしょうか)
>
>そうですが、55/3.5が1:10倍を基準に設計されていたこと、
>あと、アサヒカメラのインタビューで合焦面(というのかな?)の平面性
>を出すように工夫したことが書いてあったこと、
>昔のカタログの印象から、
>ぼくは複写を念頭に置いていると思っていました。

もちろん複写でも使えるようには設計していたはずです.
(像の平面性,歪曲の少なさ,開口効率の高さが要求されますね).
ただし複写専用,という特殊レンズではないはずで,
(まあ,複写に使えれば,接写にもOKなわけですが)
また逆に,他社のマクロレンズも同様に,上記3点にはかなり
配慮しているはずです.

>105も同じだと結論する積極的な理由はないですが、
>同じ路線で設計されているだろうと思ってきました。

105mm では複写はあまりやらないんじゃないでしょうかね.
像が良く,周辺光量が確保されていれば,焦点距離は短めのほうが
作業しやすいはずです.(高さ 2m ほどの大型複写台で仕事をしたことが
ありますが,あれは肉体労働です・・・脚立の昇降運動というか・・)

>Popular photographyのテスト結果では開放で一番優れた性能を示すと
>聞いた時(自分で読んだわけではない)、
>1-2段絞って最良の像が出るニコンのレンズ(AF85/1.4は例外?)
>とは設計も想定された使い方も違うと感じました。
>それを「全然違う」と表現したのは大袈裟かもしれませんが...
>
>>マイクロニッコールも,開放で風景とか写すとすごいですよ.
>
>シャープさではそうですね。

最高の性能というのが何かという定義が問題ですが,それがシャープさ
(解像力,コントラスト)ではない何者かなのであれば,それは主観に
よって変わりますから,話がかみ合いにくいと思います.

それと AF85/1.4 も,開放が最も「高解像度」とか「高コントラスト」
ではないと思います.しかし,開放が最良の絵を作ってくれるということは,
作画意図としては十分有り得ますし,開放を基準に,感性的チューニングが
行き届いているということも十分考えられると思います.

#あれぐらいの大口径で,開放が最も高性能というのは,ちょっと普通に買える
#値段のレンズでは有り得ないと思う.(昔のステッパー級ともいう)

ちょっと話は飛びますが,
私としては,極力自分が使ったことのないレンズに関して,本に載っている
史実や定量的な話は別として,描写のよさ云々に関してはあまり語りたく
ないと思っています.ましてや,スライドを覗いた事もなければ,なんとも
いえないでしょう.WWWに作例を載せている人も多いですが,レンズの
フレアや逆光性能に関してはある程度分かるものの,はっきり言って,
発色・コントラスト・解像力等を語るには,今のPC・ネットワーク・
ディスプレイは貧弱すぎますし,画像の扱いによって良くも悪くもなります.
まったく何も分からないわけではないですが,往々にして,悪いところを
見せるのは簡単だが,良いことを見せるにはまったくの不十分です.
(では,なぜ雑誌に作例が載っているのか?ということですが,それは単純に,
 載せなければ誌面にならないからと思ってよいと思います.)
これは「スキャナがレンズのテストに使えるか?」という命題に関しても
いえると思います.周辺部の荒れなんかは容易に出せますが,本当にその
レンズが解像度が高いのかどうかは分かりません.

また悪いことに,(上記のような状況であることをいいことに,とまでは
いいませんが)WWWや雑誌には,扇動的な情報があふれています.実際,
自分が数十万円もの大枚をはたいて,また気に入っているレンズがある
とした場合,それの良いところを宣伝したくなるのが人情だと思いますし,
アバタもエクボというのもあるでしょう.
特にニコンを始めとするメジャー系は,よりヲタク的ユーザの心を捉えて
商売をしているマイナー系製品のユーザに叩かれがちと考えてよいでしょう.

実際私もブロニカ等の紹介サイトを作っていますし,あまり人のことは
いえませんが,一応,文章としては公平性を欠かないようにと配慮している
つもりです.

まあ要するに情報は割り引いて仕入れたほうがいいですよということです.
仮にも大枚はたくわけですから.また,他の人に薦める場合,やはり
それなりの責任というものを感じます.(ブロニカのサイトなんかを見て,
買い物の参考にしている方が結構おられるようです・・・ ^^;;;;
よくDMが来るんです)

もうひとついえるのは,レンズなんて,どれも一長一短で,何が一番とは
決められないものだということです.まったく無収差で,開放から理論上限界
までシャープというレンズがあったとき,間違いなく石井さんはお買い上げに
なると思われますが :-) それを気に入らないという人もいるはずです.

だから,WWWなどで,「このレンズは○○のようなレンズだから,こういう
条件や被写体に向く」という評価はある程度信用できるかもしれないと思いますが,
諸手を挙げて絶賛というものには眉につばをつけて聞いたほうがいいと思います.
(たぶん,古谷野さんは,AME のまじめな描写が気に入らなかったと見た)
逆にいえば,よほどの難物でもない限り,向き不向きがあるわけで,それを
うまく活用しようと思えば,そのレンズを気に入って使うことが第一だと思います.
同じレンズでも,美点を見出せずに,「うーん,あまり気に入らんなあ」と
思っているレンズからは,なかなか傑作は出ないと思いますが,難ダマ・駄ダマと
言われているものでも,それを愛するがゆえにうまい作画をしているひとは
たくさんいます.

ということで,けして人の持ち物はけなさないことです.
これは先日来盛り上がった自動車の評価・価値観なんかでも同じだと思います.
車も,レンズも,気に入ってしまえば自分の勝ちですね.
(車には安全性などのファクターもあるが・・・・・)
また気に入っているものによって変わっていくのが人間の価値観です.

>ニコンは顕微鏡のレンズではアポクロマチックというグレードがあるのに、
>カメラレンズにはないんですよね。

なんというか,慣習というか,そういうのがあるんじゃないでしょうかね??
ニコンでは,あるガラス(ED)を使っていると,それを表に出しますが,
国内は同様の表現が多いですね(LD,SD,Fluorite, 等々).
海外は APO なんとかが多いなあ.
でも実際,写真レンズで,高次の色収差補正をすると,ほぼ間違いなく特殊
硝材が入ってくるので,現在は一対一に対応すると考えていいんじゃないかと
思います.

>話しは変りますが、さっき、これを書き出す前にD1Xを複写台に載せて、
>研究室にあるAi55/3.5とAF60/2.8Dを撮り比べてみました。
>被写体はハードデイスクの裏のプリント基盤で、
>撮影倍率は1/6、絞り8、約1/100秒で撮りました。
>振れ対策はしてないし、ピントが完全に一致していると限らないので
>(それでf8にした)、比較テストとして有効かどうかやりながら疑問を感じました。
>で、500万画素の解像度でレンズの解像度の限界は判りそうもないですが、
>デジタルなので個々の画素に注目しながら比較すると画素の濃淡として
>描写の違いはありますのでデジカメがこういう比較に適している側面もあります。
>ただ、その違いはそのコマの撮影条件(ピント、振れ)のバラツキかもしれないので、
>何枚も撮って、傾向を探る必要はありそうです。
>1枚づつ比較するだけで結構時間を要したので、結論は出せなかった。
>(取りあえずAF60/2.8がリード)
>自宅のAi55/2.8も含めて、今度もっと詳しく比較します。

楽しみにしています.
・・が,F8 では差が出ないんじゃないかなあ・・

では

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 日浦 慎作  Shinsaku HIURA
 大阪大学大学院 基礎工学研究科
 システム人間系専攻 システム科学分野
 〒560-8531 豊中市待兼山町 1-3
 TEL:06-6850-6372  FAX:06-6850-6341
 http://www-inolab.sys.es.osaka-u.ac.jp/users/shinsaku