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[nikomat 29800] Re: 真空管アンプ



ひうら@長文堂2号?っす.

萩原さん:
>  > ここらへん、それこそ「HI−FI性」より「アンプの味」ってのが
> > 大事になりますから、
> > 「オールドレンズの味」なんていうのと一脈通じるものがありますね。
>
>設計が古いと言う理由だけで、別に設計やコストで手を抜いてないのに
>現代のレンズとは描写が違う。
>ってのがオールドレンズの味ですかね?

先日も,「カラー時代になってから・・」という話がありましたが,
設計が古い,というのには,設計目標,規範が違う,ということが
大きいように思います.もちろん,ガラスの種類や加工技術,設計に
必要な計算パワーの違いは大きいと思うのですが・・

やはりカラーになってからはMTF重視になっているんじゃないでしょうかね.
解像度よりも,コントラスト,つまり点像の全体の広がりを小さくする方向に
設計されているように思っています.

カラーだと,ハロによる滲みがあると,周囲の色を淡くするし,エッジに色づき
などが発生して見苦しいところがあると思うんですよね.一見してオールドな
感じといいますか.

が,モノクロだと,もう少しハロを残しても,解像感がありますと,肌とか衣服,
木目のあたりの,元来ローコントラストな部分の質感,立体感が浮き出るので,
それが重視されているような気がします(ニッコール限定の話?)

あと現代レンズでは計算力に物を言わせて,少ない枚数でもそつの無いレンズに
なっていますが,つまるところ,必要以上に性能が出ているところを削って,
欠点を補うように高度にチューニングされているような気がします.
これは特に,高倍率ズームとかの,欲張ったスペックのレンズに多いかも.
一見して破綻しているようなところ,まずいところはまったく無いが,
あまり追求しても面白みが無い.特に非球面というのは,こういう
「性能の均し」を実現するデバイスという気がします.

こういうレンズは,低感度モノクロで撮って,暗室にこもってみても,
あまり面白くないものが多い.逆に,デジタル向きかも.

昔は計算パワーが無いので,一見無駄な設計のようだけど,非常に優れた部分,
光るところが残っていたりすると思うんですよね.例えば対称型のレンズと
いうのは,同じものを前後に置くわけで無駄が多いわけです.
が,原理的に優れた部分がある,横収差が原理的に前後で相殺しあうとかですね.

あとやはり,計算で設計できる部分が少ないため,実写で評価して詰めている
ところが,感性的な良さに繋がっているのかもしれません.

それと,最近のレンズは枚数が多いですが,どうしても,枚数の多いレンズは,
絞ったときに良くない気がします.あと,非球面.

「脈理などは徹底的に追放されていますから大丈夫です,そういうことは
 ありません」というのが,言われると思いますが,どのあたりまで「大丈夫」
なのかはわからない.ヲタク的な目で見るとダメかもしれない.
逆にいえば,製造管理上では,オーバースペックなものはコストに跳ね返りますから,
「問題が無い程度」に作ってある,という可能性が高いわけで,他の要因に比べて
それほど余裕がある(問題が小さい)のかどうか?というのが疑問なわけです.

非球面の製造に関してもそうで,「非常に高精度に作ってあり問題ない」と
言われますが,この「問題ない」というレベルはいかほどのものなのか?
絞ったときに,非常に高性能なものが見えてくるレベルまで,精度が追求されて
いるのか?という疑問はあります.

結局全ての製造技術は,開放の,そこそこの性能(例えば 30line/mm のコントラスト
がある程度確保されていればよい,とするなど)に対してコンパラブルになる程度に
コントロールされていて,実は,あまり余裕は無いのではないか?という気がしてい 
ます.
で,オーバースペックなものを作らないことそのものが,現代の製造技術ではないか 
と.
(このへんは乾さんあたりからご意見あるかも?)

もしもそうであるならば,そこまで技術が成熟していない時代のものの方が良い,
という可能性はある.戦艦大和・武蔵の距離計に使ったガラスは,恐ろしく質の良い
ものだったそうなんですが,ある時期「あれはもう,いまは出来ないね」という述懐が
あったらしい(今のステッパー用のものは,もっといいもの使っているのだと思いま 
すが).

実際問題,わりと単純なオールドレンズ,ブロニカの 75mm (5枚玉)や
マーシャルプレスの105mm (4枚玉)で, F8 とかで撮影すると,なかなか得がたい
細密な絵が得られるんですよね(判が大きいのは反則かも)

ただし現代でも,ちゃんと,そういう,きっちり作るという文化を一部で
残しているのが写真の世界かも.MFのニッコールAiSとか,
AFの単焦点などは,なかなか得がたい存在(世間一般から見ると,十分,
オールドな価値観で作られ,使われている?)かもしれない.
少なくとも昨今の超高倍率ズームなどとは別の世界に住んでいる.

> ニッコールでは43−86mmオートニッコールなんか典型的?

これはあまり評判が良くなかったレンズのようですが,
必ずしもオールドなものが数値的に良くないとは思わないのです.
欲張ったスペックでないものは,という限定が付くかもしれませんが.

では