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[nikomat 29805] Re: 真空管アンプ
乾です.
At 12:53 02/04/27 +0900, you wrote:
>ひうら@長文堂2号?っす.
ははは.
>萩原さん:
>> > ここらへん、それこそ「HI−FI性」より「アンプの味」ってのが
>> > 大事になりますから、
>> > 「オールドレンズの味」なんていうのと一脈通じるものがありますね。
>>
>>設計が古いと言う理由だけで、別に設計やコストで手を抜いてないのに
>>現代のレンズとは描写が違う。
>>ってのがオールドレンズの味ですかね?
>
>やはりカラーになってからはMTF重視になっているんじゃないでしょうかね.
>解像度よりも,コントラスト,つまり点像の全体の広がりを小さくする方向に
>設計されているように思っています.
アサヒカメラの最新号の35ミリF2レンズのテスト記事をみると,その
あたりを顕著に感じます.89年(確か)にでたNewFD 35mm F2のほう
が,最新のAFレンズよりも解像度はばりばりに高いです.一方最近の
レンズはMTFではほとんど差がない.だから,MTFである程度の線を
超した段階で,それ以上の品質は過剰品質,という考えで設計を
終えているように思えます.
>あと現代レンズでは計算力に物を言わせて,少ない枚数でもそつの無いレンズに
>なっていますが,つまるところ,必要以上に性能が出ているところを削って,
>欠点を補うように高度にチューニングされているような気がします.
>これは特に,高倍率ズームとかの,欲張ったスペックのレンズに多いかも.
>一見して破綻しているようなところ,まずいところはまったく無いが,
>あまり追求しても面白みが無い.特に非球面というのは,こういう
>「性能の均し」を実現するデバイスという気がします.
そうともいえます.性能を極めるというよりも,ある一定の品質を満たし,
しかもコストも低い,というあたりで最適化されている設計だと感じます.
>結局全ての製造技術は,開放の,そこそこの性能(例えば 30line/mm のコントラスト
>がある程度確保されていればよい,とするなど)に対してコンパラブルになる程度に
>コントロールされていて,実は,あまり余裕は無いのではないか?という気がしてい
>ます.
>で,オーバースペックなものを作らないことそのものが,現代の製造技術ではない
>か と.
>(このへんは乾さんあたりからご意見あるかも?)
私は製造のほうが専門なので,設計の方々と議論した経験はないので
すが,今メーカの製造部門の方々が目指しているには,「そつのない」
製品だと感じます.品質的には,ある程度のラインを超していればOKで,
あとは,いかに速く製品を送り出すか,に力が注がれていますね.です
から,確かに徹底して高性能を狙った設計ではないでしょうね.
ところでカメラの場合,同じ交換レンズでも,
・お手ごろなズームレンズ.
・プロ向けの高価なレンズ.
が両方ラインアップされているので,乱暴な議論は危険だと思います.多分おて
ごろズームは,上のように,ほどほどの線で設計・製造されているでしょう
が,プロ向けは,違う評価基準だと思います.
お手ごろなズームは,なにしろ本数が出ますから,頻繁に設計変更しても,
資金の回収は容易でしょう.ですから,市場にはやく投入して,シェアを握る
ことが最優先されます.一方,高価はプロ向けレンズは,本数が出ません
から,いくら値段が高いといっても,なかなか投資は回収できません.した
がって,設計を煮詰め,寿命の長い製品にする必要があると思います.
ところで,ニコンは,プロ向けの望遠レンズを,かなり頻繁に設計変更して
いますね.ユーザからの反響に応えてなのでしょうが,これって,実は
ニコンにとって,かなりつらいことかもしれません.とにかく製造後の
設計変更ほど金を食うものはありませんから.
>もしもそうであるならば,そこまで技術が成熟していない時代のものの方が良い,
>という可能性はある.戦艦大和・武蔵の距離計に使ったガラスは,恐ろしく質の良い
>ものだったそうなんですが,ある時期「あれはもう,いまは出来ないね」という述懐が
>あったらしい(今のステッパー用のものは,もっといいもの使っているのだと思い
>ま すが).
いや,やはりコストを度外視して作ることができるか,どうかだと思います.
どの時代でも,最高品質を得るための技術と,量産化が可能な成熟した
技術の二つがあるのでしょう.コストを度外視できれば,最高を狙う設計が
できますが,コストを考えると,量産技術の中で妥協せざるを得ない.その
違いだと思います.
>ただし現代でも,ちゃんと,そういう,きっちり作るという文化を一部で
>残しているのが写真の世界かも.MFのニッコールAiSとか,
>AFの単焦点などは,なかなか得がたい存在(世間一般から見ると,十分,
>オールドな価値観で作られ,使われている?)かもしれない.
>少なくとも昨今の超高倍率ズームなどとは別の世界に住んでいる.
昔は,今よりも写真レンズの価値が高かったし,また頻繁な製品投入も必
要なかったことが,結果として熟成された設計の高性能レンズがたくさ
ん生まれた理由かもしれません.
色々と関心があって,キヤノンのFDレンズの技術史を調べているですが,
当時のレンズの設計には,寿命が10〜15年のものがざらにありますね.
では.