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[nikomat 8792] Re: Engine brake
ひうらっす.
#仕事(セミナー)から帰ってきたらなんか山になってる ^^;
まぁ,当所の目的(下り坂FRでエンブレを使うことの危険性指摘)
は果たせたようなので,もういいんですが,せっかく書かれてるんで,
コメントしますが,おかしいっすね.
> 「全輪接地している限り、バネの伸縮により 姿勢変化する」
> ということです。
>
> # ここまでは 同意を得ているんでしょうね。
当然です.
> んで、バネの伸縮を起こさせる力は 荷重 です。
> (というのが サスペンションです)
あとアーム回りのモーメントがありますね.いわゆるジオメトリ
による力ですね.ここでの話題のタネですね.
#車全体に対するモーメントとは区別してくださいね.
> > > > でも,yd氏が言われるような下記の効果は?です。
> > > > リア輪のエンジンブレーキ+アンチリフト効果で姿勢変化は抑えられるが,
> > > > あくまでリア輪の接地圧は増加しません。
> > >
> > > では、リアサスペンションを縮ませる反力は どこが 受けているのでしょう?
#だから,リアサスは縮まないんですってば・・アンチリフトで伸び量を
#減らすことは出来ますが,これはサスーボディ間の内力としてアームを
#縮み方向に回転させるモーメントが発生しているだけで,外部には力は
#出ていません.つまりやはり接地圧は増加しないんです.(以下で詳述)
#つまり,バネレートを上げたような効果があるだけで,いくらアンチダイブ
#によってリアのリフト量が0になっていたとしても,やはりリアの荷重は
#減速時には減っています.お分かりになりますか?
姿勢変化が押さえられていると(たとえばリジッドサスとか,姿勢変化が
事実上0と見做せるサスでは),どの制動輪で減速しようと,前後の荷重
配分の変化の様子は同一で,減速Gと重心高さによって決まります.
減速Gは路面上で路面に平行に働くので,車の重心からGを発生させている
点へのベクトルと,減速Gのベクトルのベクトル積でモーメントは決まりますが,
路面は1直線なので,路面とタイヤの間に働く減速Gのベクトルはこの
直線上に乗るベクトルであり,ゆえに減速時のモーメントはこのGを発生
させている点が前に来ようが後ろに来ようが同じです.
#普通はこの説明で「終わり」なんですが・・・
吉田さんは以下の文で,前輪で制動したら前輪の接地点を基準にモーメント
が発生し,車全体に浮こうとする力が働き,逆に後輪で制動したら,
車全体に後輪の接地点を中心に重心を推し下げる力が働き,車全体が
沈む・・というような説明をなさってますが,これは完全なる間違い
です.なぜなら,車全体の荷重の総和を変化させるような力は働いて
いないからです.制動力が発生するモーメントが前後の車輪へ荷重を
配分するだけで総和は一定です.
まずはアームの動き,つまりジオメトリの話から.
トレーリングアームの構造とその効果は理解してます.
> <お話1>
> このような車を 4輪同時 緩やか&一定減速になるように制動したら、
> 自然長からの 沈み量は F 16cm, R 8cm に なったとします。
こういう場合が有り得るのは了解です.
これはリア荷重が抜けていないからリフト量が小さいのではなく,アームに
モーメントが働いているからです.このモーメントを生じさせる力は,
アームの付け根Cを前へ引っ張る車の自重の慣性力(と,それに対する
反作用である,タイアの接地面Bを後ろへ引っ張る力)であり,
これは水平方向の力なので,路面に対してタイヤを押しつけるような
力ではありません.
つまり,
D→
==---------------+-------------+------ 前輪へ
$ |
$ |
$ |
A ○---------------○C→ A:ハブベアリング
| B:接地面
| C:アーム取りつけ点
←B+ D:重心
のようになります.バネ$は縦方向の力だけに関与し,加減速方向の
力はCにかかります.(しかしアームにモーメントがかかっている場合,
Cには縦方向の力もかかります.以下で説明)
この絵で,減速時にはBのところに上記のような方向の力が働いて,
これがアームに時計回りのモーメントを生じます.これがアンチリフト
です.Bに対応する反力はDの慣性力ですが,これはフレームを伝わって
Cにかかります.この力は当然釣り合います.じゃぁなぜバネは圧縮される
のに,荷重は増えてないんだ?というと,モーメントはバネを圧縮しようと
する代わりにCを引き下げるような力を生じるからです.つまり,車の内力
になるわけですね.
また,車全体の荷重配分というのは,この話とは独立で,重心高さと
減速Gによって決まるモーメントが,重心と各車輪までの距離によって
分配されるだけです.以下で述べます.
まず,
> まず 前輪だけで減速した場合、接地点よりも 重心Gのほうが 上です
> ので、Aはリフトしようとします。この力の源は、減速に伴う、前輪の
> 接地点を中心とする瞬間中心周りのモメントですから、点Aには、やはり
> 前輪の接地点周りに 上(上手だと 真上より ちょびっと 右)に リフト
> しようとする力:FPが 加わります。
>
> そのため、前輪だけで減速した場合だと、B点には、Aから受ける「FO
> − FP」が掛かります。
> この結果、外から見ると、前が沈んで、うしろが 持ち上がったような
> ピッチング・モーションが 観測されます。
そうですね.ここで「前が沈む」というのが重要です.
このモーメントの反作用でフロントが沈むんですね.
*重要なのは*,これはモーメントであって,並進力ではないので,
リアがリフトしようとしている分だけフロントに荷重が寄っていることです.
逆に,以下の説明ですが,
> 今度は リアだけで 制動しましょう。
> 今度は「重心Gの B点周りのモメント:MB」が 発生し、点C には
> MBから 発生した力で 下方(上図では 真下より ちょびっと 右側)
> へ 押し付けられます。
これが違いますね.
モーメントが生じた結果,車は時計回りに回ろうとしますが,重心には
上下方向の力(並進力)が働いていないので,リアを浮かせ,フロントを
沈めようとする力が働きます.車全体が下方向へ押しつけられるというのは
明らかな間違い.#力学の初歩
簡単に説明するため・・・重力の働いていない系で,
B
*
*
*
G
*
*
*
A
---------------------------------------------------------->
というような棒が右へ飛んでいるとします.このとき,Aを瞬間的に
固定するとどうなるか?
吉田さん流力学だと,Gに働く慣性力がAを中心とするモーメントと
して発生し,この棒は下に書いた直線へたたきつけられるようにAを
中心としてたたきつけられると言いたいのでしょう.しかしこれは
明らかに間違い.
#モーメントによる挙動は重心を中心に論じなければならない.
Aを固定した瞬間,Gに対して減速方向の並進力(左方向)が働くと共に,
Gを中心とする時計回りのモーメントが発生し,このモーメントがAを
左上に引き上げ,Bを右下に下げる力を発生させます.
この瞬間の力は,Aに対する真左方向の激力だけで,下方向への力は
ないわけなので,この棒はGを中心に時計回りに回転しながら,
そのまま右方向へ(まったく下方向には逸れずに)動こうとします.
では,なぜAを固定したら,実際にはこの棒は床へたたきつけられるのか?
それは,Aを固定した瞬間に働くモーメントにより,Gを中心に,Aを上げ,
bを下げようとする動きが発生し,そのうちAの方が固定されていることから
今度はAを(その時初めて)下へ下げようとする力が働きます.これが初めて
Gを右斜め下方向へ動かそうとする並進力となって働き,最終的にAを中心に
G,Bが時計回りに回転します.
つまりAが上下方向にも拘束されているからなんですが,これは上記の車の
場合には当てはまりません.というのは,Aは路面に乗ってるだけで,まさつ
力は路面に平行に働きこそすれ,上下方向にはなんらの働きもしないのです.
サスがリジッドの場合,このモーメントは前輪・後輪間で荷重を移動させる
働きのみを発生させ,その総和は変化しません.
有り得るのは,車が制動されたときに,そのとき車全体が回転運動するので,
前後サスが伸び縮みし,エネルギーがサスに蓄えられるため,そのエネルギー
が車全体の重心を上下に動かすエネルギー源となることは有り得ます.
が,定常状態では絶対に前後荷重の総和は変化しません.
定常状態は,上記の固定の始まった瞬間と同じ力が発生したまま継続
するような形になります.以下のような系ですね.
*
*
G
* *
* *
* *
A B
---------------------------------------------------------->
Aに左向きの力をかけても,Bにかけても,A,Bが床面に押しつけられる
力の総和は重心Gに働く重力と等しいということがわかります.
なんなら,この「土台」を秤に載せて実験でもしてみてください.
#なんとなく,リア制動は沈み方向,フロント制動は伸び方向,・・という
#感覚なのでしょうが・・・間違いです.バイクでこういう感じがするのは,
#リアブレーキだと強い制動ではリアの荷重が抜けてリアがリフトすることが
#ないですが,フロントブレーキだとフロントにすべての荷重が集中して,
#その後リアが浮くことがあるからだと思います.(このときフロントの荷重
#は通常より当然増えています.またリアブレーキングの時もリアからはやはり
#荷重が抜けています.
もっと聞きたいかた,反論はDMで.
文句があるならちゃんと数式入りでWWWかなんかで説明しましょう.
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日浦 慎作 Shinsaku HIURA
大阪大学大学院 基礎工学研究科
システム人間系専攻 システム科学分野
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